K-POPブームが一段落した今、もっとも熱い『韓流モノ』がK-ミュージカル。日本とは桁違いの国費を投入して育成したクリエーターや俳優が第一線を張るようになり、日夜“本場の舞台”を作っているのだから、韓流ファンならずとも舞台好きなら見て損はない。

 

そんな、日本におけるK-ミュージカルブームの仕掛人が、芸能プロダクション『アミューズ』の創始者で現代表取締役会長の大里洋吉氏(67)。かつてキャンディーズのマネージャーを務め、アミューズ創業後はサザンオールスターズや福山雅治ら一流のアーティストや俳優を育てた、エンタメ界の重鎮だ。さらに『シュリ』(’99年)『JSA』(’00年)などの韓国映画を日本に紹介した元祖“韓流ブームの立役者”でもある。

 

今年、大里氏はミュージカル専門劇場『アミューズ・ミュージカルシアター』を六本木にオープン。エンタテインメントを知り尽くす大里氏が、韓国ミュージカルの魅力を語った。

 

「7年前ほど前、韓国のテハンノ(大学路)でたまたま見たミュージカル『シングルズ』に衝撃を受けた。お隣の國でこんなにもレベルの高いものが作られていることに、非常に驚きましたね。わずかなキャストで何役も演じ分け、歌も芝居も抜群にうまい。そして何より、若い世代のクリエーターの脚本と音楽が素晴らしい。みんな30代後半くらいで、しかも女性が多いんです。それから、小劇場の作品ばかりを見て歩きました」

 

ソウル大学のあったテハンノ地区は、150以上の劇場が立ち並ぶ、アジア随一の劇場街だ。今やNYのブロードウエー、ロンドンのウエスト・エンドに続く、世界第3のミュージカル街に成長。ここで、韓国人クリエーターが韓国文化に根ざした脚本と音楽を作り、韓国オリジナルの創作ミュージカルを生み出している。

 

「韓国ミュージカルの歴史は、日本よりもずっと浅いんですよ。でも、政府の助成金や人材育成強化によって、この10年で飛躍的に成長した。国立大学にはミュージカルを基礎から専門知識まで学べる学科があって、優秀な人材は国費で留学させる。だからいいクリエーターが生まれる。今の韓国ミュージカルにはかなわないですよ。日本ももっとがんばらないといけませんね」

 

アミューズ・ミュージカルシアターでは、大里氏が自ら歩き“ほれ込んだ”作品を上演している。しかし、課題もまだ多い。

 

「もっとたくさんのお客さんに見ていただかないと。アイドルや有名俳優が出ていないと見たいとは思わないのかもしれないけれど、本当にいい作品を持ってきているんですよ。『風月主〜美しきファランの禁断の愛〜』も『兄弟は勇敢だった?!』も、千秋楽はスタンディングオベーションでした。劇場に足を運んでもらえれば、その魅力をわかってもらえるはずです」

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