■遭うべくして被害に遭う被害者はいない
重要なのは、認識の転換と持続的な関心だ。n番部屋事件がメディアでしきりに取り上げられていた2019年3月の2週間で、n番部屋関連記事は1万2000件に達した。しかし、それから3カ月後の6月には、1000件を少し超える程度だった。それもほとんどが「n番部屋の主犯格が逮捕された」という程度の記事だった。国民の関心が低下するに従い、記事の本数も減っていく。関心の低下を感じるたび、先日被害者に会ったときにした約束を守れないかもしれないと思うと不安になった。4月に会った被害者の言葉から、一部をここで共有する。
博士が捕まったと聞いて、うれしくてたまりませんでした。本当にこれで終わったんだと思ったんです。これからは何の心配もなくご飯を食べ、眠り、友達にも会えるんだ。あいつが捕まったから、画像も全部削除されるはずだ、そう思いました。
しかし、それは違いました。これから1、2カ月は静かでしょう。でも、長くて3カ月、もう少し経ったら、また部屋が開設されて、むしろさらにひどくなるでしょう。きっと隠れてやると思います。
これから半年後、1年後、2年後がとても怖いです。世間の関心が薄れると、その途端に本当にもっと多く……もっと広がりそうで。
#MeTooやスクールMeToo、バーニングサン事件などの性犯罪関連の出来事が、社会の記憶の中からあまりに簡単に忘れられているようだ。関心を持ち続けないと、加害者たちの犯罪行為を予防し、然るべき処罰を与えることも難しい。
【PROFILE】
追跡団火花(ついせきだんひばな)
プルとタンからなる匿名の大学生2人で構成された取材チーム。「n番部屋事件」の最初の報道者。記者志望の一環として参加した「真相究明ルポ」コンクールの応募準備のなかで「n番部屋」の存在に気づき、潜入取材を開始。韓国市場最大規模のデジタル性犯罪としてその実態を暴いた。YouTubeやInstagramをはじめとしたSNSでデジタル性犯罪の実態を伝える活動をしている。
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