「雅子さま!」
宮城県仙台駅で、雅子さまは人々の歓声に応え、笑顔で手を振られた。
8月20日、皇太子ご夫妻は宮城県をご訪問された。
ご夫妻の東日本大震災の被災地ご訪問は、11年8月の岩手県以来、約2年ぶり。 現地滞在時間は6時間ほどで、七ヶ浜町の応急仮設住宅や、震災後に、みそ生産を再開した生産組合を視察された。
ある宮内庁関係者によれば、
「体力の消耗が激しいからでしょうか、お病気になられてからの雅子さまは特に夏の時期のご公務を苦手とされていらっしゃるようです。そういった意味でも“奮起”されたといえるでしょう。
宮城県ご訪問の8月20日という日程が、宮内庁から宮内庁から報道機関に伝えられたのが8月6日のことでした。
そしてその当日、雅子さまは皇太子さまとご一緒に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにお出かけになったのです。
『OECD東北スクール』の取組の発表会に出席し、被災地から来た少年少女たちを励まされるためでした」
OECD東北スクールとは東日本大震災の被災地の中高生たち100人ほどが参加しているプロジェクトのこと。OECD(経済協力開発機構)や福島大学などによって設立され、東北復興のアピールやサポートの活動をしている。
参加者たちは津波で家族を失ったり、家を流されたり、原発事故のために、ふるさとを失ったりと、大きな悲しみや苦しみを乗り越えてきた少年少女たちだ。
実は皇太子ご夫妻のご出席のきっかけになったのは、福島県いわき市出身で、現在は京都府内の高校で学んでいる釣巻洋子さん(17)の書いた手紙だった。
雅子さまが東北の復興に深い関心を持ちであることを報道で知った釣巻さんは、スクールの活動内容や自分の将来の夢などを切々と書き綴ったという。
OECD東北スクール運営事務局でプロジェクトマネージャーを務める福島大学人間発達文化学類教授の三浦浩喜さんは言う。
「その後、雅子さまが『ぜひ皆さんをお励まししたいです』と、東京で開催予定だったスクールの発表会への出席を希望されていると伺ったのです」
8月6日の発表会ご臨席は、雅子さまの強いご希望で実現したご公務だったのだ。
当日、皇太子ご夫妻のご案内役を務めた釣巻さんに雅子さまは、
「お手紙ありがとうございました」
そう言って微笑まれたという。
「私の手紙でいらしていただけるとは、夢にも思いませんでしたので、本当に感激しています……」(釣巻さん)
皇室ジャーナリストの松崎敏弥さんは言う。
「雅子さまは手紙を読まれて、被災地出身の少女が故郷のために懸命になっている様子にお心を打たれたのでしょう。
被災地を思いながらも、なかなか再訪を叶えられずにいた雅子さまにとって、彼女の手紙は、宮城県最終ご決断の後押しにもなったのではないでしょうか」