9月10日の午後、美智子さまは東大病院から退院された。乳がんの摘出手術からわずか2日での退院となり、病院の玄関で病院長や看護部長にあいさつされた美智子さまのご表情も晴れやかだった。
「美智子さまの左の乳腺に腫瘤が見つかったのは今年7月の健康診断です。その後の検査で乳がんと診断されました。病期は『ステージ1』で、明らかな転移もありませんでした。医師団は全身麻酔のうえ、がんとその周辺だけを摘出する『乳房温存手術』を行いました」(宮内庁関係者)
手術を前にした8月下旬、美智子さまは上皇陛下とご一緒に、長野県・軽井沢と群馬県・草津で静養されている。
「上皇陛下の退位関連行事に伴う過密スケジュールの影響もあってか、美智子さまはかなりお痩せになってしまいました。ご高齢でもありますし、疲労の蓄積やお体への負担は想像されていた以上のものだったようです。今回のご静養は乳がん手術へ向けて、美智子さまに体力をご回復いただくことも大切な目的でした」(皇室担当記者)
美智子さまと親交の深い絵本編集者の末盛千枝子さんは、ご静養前に電話を受けたという。
「軽井沢に行かれる前の晩でした。『婦人之友』9月号の書評欄に、上皇后さまが朗読されてきた詩とその英訳などを収めた書籍『降りつむ』と、私のエッセイ集『根っこと翼 皇后美智子さまという存在の輝き』の書評が載っていることをお知らせくださったのです。そのことをとてもお喜びになっていましたが、手術をお控えとなっていたからか、いつものお元気な上皇后さまとは少し違うご様子も感じました。翌日、軽井沢駅に到着されたときのご様子を映像で拝見したのですが、少しお疲れのようで……。しかし、ご静養から帰られてサントリーホールのコンサートにお出かけになったときには、お元気そうでした。お隣の上皇陛下も柔らかなご表情をされていましたね」
軽井沢ではテニスでご友人たちと旧交を温められ、妹の恵美子さんの別荘もお訪ねになるなど、例年と同じように過ごされた。草津ではワークショップに参加されて、世界的フルート奏者、カールハインツ・シュッツさんと合奏で、サンサーンス『白鳥』のピアノ演奏を1時間ほど練習された。現地で美智子さまに会った知人はこう語る。
「少しお痩せで、最近は『ピアノの譜面がなかなか覚えられないのよ』とおっしゃっていました。けれど、拝聴した美智子さまのピアノ演奏は素晴らしいもので、ほかの参加者たちからアンコールをお願いされるほどでした。そのアンコールにお応えになり、華麗に演奏される美智子さまのお姿を拝見して、ご病気も心配ないと思いました。そしてお帰りの際には、美智子さまから『来年もね』とのお言葉をいただけました」
旧友たちとの会話、そして大好きなピアノを楽しまれて、美智子さまは手術へ向けての体力も英気もしっかりと養われたようだ。
8日の手術は約4時間で無事終了。リンパ節への転移も認められなかった。今後、詳細な病理診断の結果を踏まえ、再発を予防するホルモン療法などが検討されるという。
手術を乗り越えられた美智子さま。友人たちに囲まれ、文学を語らい、ピアノを演奏される日を心待ちにされていることだろう――。