実際に5月18日には、ご養蚕作業を当日直前になってキャンセルされたことも。ご体調が整わなかったことが原因とみられている。
「今回、天皇陛下が蚕の世話を雅子さまとご一緒になさったのは、陛下たってのご希望だったと聞いています。できるかぎり近くにいて、見守りたい――。そういった陛下の深いお気持ちを感じる出来事であったと思います」(宮内庁関係者)
天皇陛下は今年2月の誕生日会見でも《できる限り雅子の力になり、支えていきたい》と語られていた。陛下が《雅子さんのことは僕が一生全力でお守りしますから》とプロポーズされたのは28年前のこと。にこやかな養蚕作業には、雅子さまを「私が守る!」という陛下の今も変わらぬ強いご意志が滲んでいたのだ。
精神科医で立教大学教授の香山リカさんもこう言う。
「イギリスご訪問などは、長い時間をかけて、以前からしっかりと準備されていたと思います。そのぶん、突然のコロナ禍での延期は、雅子さまにとって大きなストレスにもなりえます。そんなときに天皇陛下がご養蚕に同行されたことは、雅子さまにとっては陛下のお気持ちを感じて、とても心強かったはずです」
しかし、世界を覆うコロナ禍は、いまだ皇室の活動にも暗い影を落としている。
「2月23日の天皇誕生日の儀式および一般参賀がお取りやめになったのを皮切りに、ご公務は次々と中止されて、皇族方のスケジュールは白紙状態が続いています。天皇皇后両陛下のお出ましは、8月15日の『全国戦没者追悼式』までないのではないでしょうか。このまま皇室と国民の触れ合いや交流がない状態が続くと、皇室に対する国民の敬愛が薄れて、存在意義を失ってしまうのではないかと宮内庁内でも危惧されています」(前出・宮内庁関係者)
そんななか、すでに両陛下は前例なき「皇室改革」へ向けて一歩踏み出されているとみるのは、皇室ジャーナリスト。
「陛下と雅子さまが、5月20日、日本赤十字社の社長と副社長を赤坂御所に招いてご進講をお受けになりました。翌日、そのときの両陛下のお言葉が、それぞれ宮内庁のホームページで公表されたのです。誕生日のご感想以外で“皇后のお言葉が単独で”公表されるのは異例のことです」
両陛下は6月3日にも、全国保健所長会の副会長ら保健所関係者3人と面会し、現場の状況などについて懇談された。
「宮内庁は新型コロナウイルスをめぐり、両陛下が専門家から説明を聞くご進講や面会に関して、その場でのご発言内容をこれからも公表していくとしました。そして、公表は天皇陛下のご意向を踏まえたものであると明かしたうえで、『その時々にでき得る、最大限のお気持ちの発信の形』と説明したのです」
つまり陛下と雅子さまは、前例を打破し、現場の医療関係者に労いのお言葉、国民へのメッセージを発信したのだ。