■「法的な落とし穴に陥りやすくなる」
まず小室さんは論文のはじめに、起業家が自分でウェブサイトを作ると《法的な落とし穴に陥りやすくなります》《自分たちがどんな法的リスクを負っているのか、それにどう対処すべきか、わからないことが多いのではないでしょうか》と警告。
そしてジョンという、「フォーダム・コーヒー」というコーヒー店を営む架空の人物を登場させ、次のように解説する。
《たとえばフォーダム・コーヒーのオリジナルブランドのコーヒー豆がエチオピア産なのに「コロンビアン・コーヒー」と名付けると、原産地を誤って表現することになるので、使用するべきではありません》
《似たような名前の会社(Starbucks)が存在するため、「Star Bags Coffee Club」という名前にすべきではありません》
論文では、商標のほかに顧客の個人情報保護といった課題についても丁寧に解説している。
経済アナリストの森永卓郎さんにこの論文を読んでもらうと「英語はしっかりしているし、論理構成もよくできています。専門誌に論文が掲載されたこと自体、1つのステータスになるでしょう」と高く評価。
さらにニューヨーク州弁護士のリッキー徳永さんも太鼓判を押す。
「同じ号の執筆陣は教授レベルの人もいて、その中に学生の小室さんがいるわけですから、かなりのインパクトがあります。前回の論文との共通点は、起業家や法人がインターネットをどう活用していくのかというテーマを扱っているところ。まさに、これから伸びていく分野です。小室さんがもし、そういったビジネスを法的にサポートしていく弁護士になるなら、高額の報酬が期待できるでしょう」
小室さんは2年前にも、クラウドファンディングによる資金調達の際に起業家が取り組むべき課題を分析した論文を同誌に寄稿。その論文で、学生を対象とした論文コンテストで2位に選ばれる快挙も達成した。
今回の論文は、次のように締めくくられている。
《法律を理解することで、ビジネスオーナーは潜在的な訴訟を回避し、他のビジネスとの差別化を図ることができます》
《Webサイトのアクセシビリティに関するすべての問題に対処することは困難な場合もありますが、法的な落とし穴を避け、潜在的なリスクをできる限り抑えるためには、企業家は常にWebサイトのコンプライアンスに関する法律について最新の情報を得る必要があります》
金銭トラブルへの対処では「落とし穴」に嵌ってしまったように見える小室さん。この論文の実績で「国民の理解」に少しでも近づくことはできるのか――。
「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載