■問題発言の歴史学者に話を聞くと…
では、男子出生のために用いる「近代医学の粋」とは、いったい何なのか。本誌は発言の真意を聞こうと試みたが、今谷氏からは「取材はお受けできない」との返答だった。
医学の力で男女の産み分けをすることはできるのか。20年にわたって不妊治療に携わる生殖医療の専門医に話を聞いた。
「数年前から不妊治療の現場では『着床前スクリーニング』といって、重篤な遺伝子疾患が生じる可能性のある遺伝子変異や染色体異常を検査するために、体外受精させた受精卵の着床前診断を行っています。技術的には、この着床前診断で受精卵の染色体を調べ、男子の受精卵を子宮に移植すればほぼ100%男子を産むことができます。
男女の産み分けにはゼリーなどを用いる方法もありますが、精度は低く、もし確実に産み分けるならば着床前診断を行うしかないでしょう。しかし、男女の選別は倫理的に大きな問題があり、日本産科婦人科学会は性別の検査を目的とした着床前診断は行わないとの見解を出しています。また、体外受精のためには卵子を針で吸引する必要があり、女性の体に負担がかかります」
今谷氏の発言に、近現代の皇室に詳しい名古屋大学大学院教授の河西秀哉さんは「正直、ギョッとしてしまいました」と語る。
「もし着床前診断を想定した提言ならば、生命倫理や人権の観点から問題があると思います。また、そこまでして男子出生を求めると、ジェンダー平等が進む社会に逆行して“男子を産むことこそがよいことだ”という風潮を発信することにもなります。国民からの支持を失い、皇室の『国民統合の象徴』という存在意義を損ねてしまう可能性もあると考えられます」
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