■美智子さまの所作に目を凝らされて…
フローレンス・ナイチンゲール記章は、近代看護を確立したナイチンゲールの功績を記念して、1920年に創設された。紛争や災害時の看護活動、公衆衛生や看護教育などに貢献を重ねた世界各国の看護師のなかから、2年に一度、赤十字国際委員会が受章者を決める。
日本から選ばれた看護師には、名誉総裁である皇后がお手ずから記章を授けられてきた。いわば、皇后の存在なくしては開催できない行事ともいえる。この授与式の意義を、皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんはこう強調する。
「受章者だけではなく、雅子さまにとっても形だけの儀式ではありません。明治天皇のお后であった昭憲皇太后が国際赤十字社に下賜された寄付は、現在も基金として赤十字の活動に寄与しています。以来、皇后さまと日本赤十字社の関係は代々受け継がれているのです。
皇后さまは慣例的に名誉職をお務めになりませんが、日本赤十字社の名誉総裁だけは例外とされてきました。ナイチンゲール記章の授与式は、皇后さまが単独で出席される公務のひとつ。もうひとつが全国赤十字大会ですから、非常に重みのあるご公務なのです」
日本各地で、医療体制の逼迫が叫ばれ、医療従事者は絶大な負担に苦しんでいる。こうした状況下だからこそ、受章者を称えることで全国の看護師を激励したいという決意が、雅子さまのお背中を押したのに違いない――。
「8月4日にも両陛下は、内閣官房の孤独・孤立対策担当室長を御所に招かれ、コロナ禍のために孤立を深める社会的な弱者をめぐる状況などについてお話を聞かれました。
困難な状況におかれている人々を支える活動をサポートしたいという思いを、雅子さまはさらに強めていらっしゃるのでしょう。
医療の現場で国民のために苦労する看護師たちを労い、国民を代表してお礼を伝えたいというお気持ちも、そうした思いの表れなのだと思います」(皇室担当記者)
医療の最前線で日々奮闘する看護師を激励するというお務めへのご自覚は、皇太子妃のころからお持ちになっていた。
「2017年の授与式では、当時名誉総裁だった美智子さまが記章を授けられていました。
皇太子妃は日本赤十字社の名誉副総裁を務めるので、雅子さまは美智子さまのお傍で、美智子さまの一挙手一投足を見逃さないように、目を凝らしてご覧になっていたことが印象に残っています。
所作一つ一つを頭の中に入れようとする必死さが漂っていました。そうしたたゆまぬ努力があったからこそ、2019年の授与式でお務めを見事に果たされていたのでしょう」(前出・渡邉さん)
雅子さまは感染爆発に屈することなく、“皇后の大任”をやり遂げるため、3年ぶりの授与式に臨まれる。