■“高齢化”で問われるご公務の存在意義
そして陛下と雅子さまは、皇室の将来のため、“改革”にも思いを巡らせていると、前出の宮内庁関係者は明かす。
「陛下は皇太子時代から、『時代に即した新しい形の公務』と繰り返し語られています。オンラインによるご交流や国際親善の場での和食提供など、さまざまな改革を断行されてきました。さらには、ご公務そのものの削減や見直しについても、陛下と雅子さまは果敢に着手される強いお気持ちがあるというのです」
両陛下を筆頭に皇室の方々が担われるご公務は、全国各地へのご訪問、日本と世界の絆を強める国際親善、名誉職を務める団体の式典へのご出席——など、多岐にわたる領域で国を支え、国民との“接点”にもなってきた。
「しかし、皇室全体のご公務の数は、一部報道によると2023年9月から11月にかけて337件。これまでも見直しが図られてきましたが、高齢化するみなさまのご負担を大きく軽減できていません。
こうした現状からも、両陛下による主要な地方ご公務にあたる“四大行幸啓”のひとつに位置付けられ、“国体”と呼ばれる国民体育大会(2024年からは国民スポーツ大会)へのご臨席にも、関係各所から見直しの声が上がり続けています」(前出・皇室担当記者)
スポーツ振興や各地の施設整備などを目的に1946年に始まった国体は、昨年11月に開かれた全国知事会でも、政府に対して見直しの声が上がっていた。前出の宮内庁関係者も、
「第1回大会から半世紀以上たち、すでに全国のスポーツ施設は充実していることから、全国知事会が開催の是非について問題提起をしたのです。
また戦後の荒廃した国土の緑化のために1950年に始まった全国植樹祭についても、“当初の目的は果たせているのでは”と、宮内庁内で指摘され続けています。
公務の多くは省庁や都道府県など幅広い組織が関わり、削減は簡単なことではありません。しかし両陛下は、皇室が直面する問題にどのように対処するか、慎重にご思慮を重ねられているようです」
皇室と同じように英王室でも、先月チャールズ国王にがんが見つかったことに端を発して、“公務の担い手不足”に直面している。ジャーナリストの多賀幹子さんはこう話す。
「英王室ではキャサリン皇太子妃も腹部の手術を受けて療養中で、ウィリアム皇太子も一時公務から離れる状況がありました。しかしチャールズ国王は、複数の王室メンバーを、公務を代行できる『国務参事官』に任じるなどの対策をとっています。
国王はいくつかの公務も中止にはせず“延期”という形を取っていますが、王室が国民の期待を裏切ってはならないという思いが強いからなのでしょう」
こうした姿勢は、日本の皇室にも通じるものがあるのだろう。静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんは、
「両陛下をはじめ皇室の方々は、東日本大震災など災害に苦しむ国民を励ますため、被災地に赴かれてきました。特に両陛下は、今月下旬にも能登半島を訪問されます。困窮する人々に寄り添われることを目的にしたご公務は、これからも皇室が果たすべき大切なお務めといえるでしょう。
ただご公務のなかには、それぞれ歴史や個性がある一方で、慣例化して出席されているだけのような式典や、国民生活と文化の向上に役立っているのか見えにくい行事があるのも事実です。ご公務が果たす社会的な役割に向き合われながら、再編成されるべき時期に差しかかっていると思います」
皇族の高齢化という問題と闘われながら、「もっと苦しむ国民の元へ」というご決意を固められている雅子さま。陛下とともに、これからも奮闘されていく。