■両陛下が守られる「一視同仁」の思想
やさしく声をかけられたり、笑顔をお見せになったりと、穴水町、能登町の被災者たちに復興への希望を与えられた雅子さま。
新田栄子さん(84)も、そのうちの1人だった。
「穴水駅の前で、マイクロバスに乗っている両陛下をお迎えしました。雅子さまはやさしいお顔で、やっぱり元気が出ます」
実は新田さんは、天皇陛下にお会いするのは“60年ぶりぐらい”なのだという。
「穴水町の婦人会で、皇居に勤労奉仕に行ったとき、皆さまがご会釈くださいました。
昭和天皇と香淳皇后、上皇ご夫妻、そして陛下とお会いできてうれしかったです。当時の陛下は5~?6歳でいらしたと思います。だから私にとっては“再会”になります」
現地滞在時間は約8時間。天皇陛下と雅子さまの全身全霊をかけてのご激励となったが、実は前例のない“三連続ご訪問”も検討されているというのだ。
宮内庁関係者はこう語る。
「これまで両陛下が慰問されたのは、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の4カ所。しかし能登半島にはほかにも甚大な被害を受けている地域があります。たとえば、両陛下が新婚時代に宿泊された七尾市の家屋損壊は約1万3千棟と、輪島市と同程度の被害が出ています。また津波被害も受けた志賀町も、5千棟以上の家屋が損壊しているのです」
皇室が重んじている思想の1つに「一視同仁」がある。誰をも差別せず、すべての人を平等に見て一様に仁愛をほどこすべき、というものだ。
「皇室の原則であり、天皇陛下と雅子さまも徹底されています。またそれ以上に、両陛下は現地視察により、復興が短期間ではなしえないことを痛感されているのです。被災地で涙を流す高齢者とふれあわれた雅子さまも、『1人でも多くの被災者を励ましたいのです』と、陛下へ熱心に訴えられているそうです。
4月23日には園遊会、6月には英国ご訪問など重要なお務めが控えていますが、その間を縫っての3度目の石川県ご慰問となるでしょう」(前出・宮内庁関係者)
元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司さんは、
「被災地のお見舞いに行かれるかどうかの基準はなく、天皇皇后両陛下のお気持ちで決まります。今回に限らず、被災直後のお見舞いは、現地の負担を軽減するために日帰りが前提ですから、滞在時間には制約があります。
そのため回数を増やし、より多くの地域を訪問したいと両陛下はお考えなのでしょう。石川県に3回目のお見舞いに行かれる可能性は高いと思っています」
1人でも多くの被災者に元気を与えるため、雅子さまはいまもなお、能登地方にまなざしを向けられている。