「ついに思い出の地・日光を訪れることがかない、上皇さまはもちろん美智子さまも感無量でいらっしゃるのではないでしょうか」
そう語るのは皇室担当記者。5月28日、上皇さまと美智子さまは、栃木県日光市を訪問された。
「太平洋戦争中の1944年5月、当時学習院初等科5年生だった上皇さまは、静岡県沼津市に疎開されました。7月には日光市の田母沢御用邸に再疎開、さらに翌年には奥日光・湯元温泉にあった南間ホテルへ移り、終戦を迎えられました。
もともとは戦後70年の’15年9月に旅行される予定だったのですが、3度も延期されたのです」(前出・皇室担当記者)
戦後70年という節目の“過去を見つめなおす旅”と位置付けられていたが、関東・東北豪雨のために延期。その後も、熊本地震やご体調不良により、ご訪問がかなわなかったが、9年越しで実現したのだ。
28日には、上皇さまが疎開され、1947年まで御用邸として使用されていた日光田母沢御用邸記念公園をご夫妻で訪問された。
「上皇さまにとって思い出の地を巡る“感傷旅行”ともいえますが、美智子さまはそれ以外の意義も見いだされているそうです」(前出・皇室担当記者)
現在は赤坂御用地にある御所で生活されている上皇さまと美智子さま。数十年来続けられてきた“朝の音読”の習慣に変化があったことが公表されたのは’22年のことだった。
「美智子さまが88歳をお迎えになった際に発表された文書に、上皇さまが学習院初等科で学ばれていた時代の教科書を読まれていることが記載されていました。ほかにも認知機能の低下を防ぐため、さまざまな取り組みを実践されているそうです」(前出・皇室担当記者)
教科書の音読について、精神科医の香山リカさんはこう語る。
「認知機能が低下した方のリハビリテーションの一つとして、『回想法』という心理療法があります。アメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が’60年代に提唱した方法で、いまも有効とされています。
昔の思い出がよみがえるような写真・品物・音楽などを見たり聞いたりしながら、当時のことを語ってもらうのです。リラックスして話せますので、気持ちも落ち着き、脳も活性化します」
初等科時代の教科書の音読習慣も回想法の一環とみられるが、懐かしの地のご旅行も同じような効果があるという。
「上皇さまにとって子供時代を過ごした土地に赴かれ、当時のことを思い出しながら、そのことをお話しされることは、リラックスできるお時間であり、刺激を受けられることでしょう。
そうしたご様子を間近でご覧になることで、美智子さまにとってもストレスから解放されるひとときとなると思います」(香山さん)
9年越しの日光ご訪問には、“上皇さまのご記憶を守り抜く”という美智子さまの悲壮なご覚悟も秘められていた。