■国際親善の場で能登の伝統工芸品を
「地元紙の北國新聞が7月1日に、アンケート結果を報じています。210人の被災者に『復旧・復興している実感があるか』という質問に対して、約7割が『ない』『あまりない』と、回答したというのです」(前出・皇室担当記者)
直近で現地入りしたボランティアたちも、倒壊した建物や瓦礫が撤去されておらず、そのまま残っている様子に驚いているという。
石川県のボランティアセンターのスタッフは、現地の状況についてこう話す。
「ボランティアに関しましては、ゴールデンウイークには全国から多くの方が来てくださり、家屋の片づけ、ゴミの運搬、仮設住宅への引っ越しの手伝いなどの作業が進みました。
しかし連休明けから参加人数が少なくなり、いまは申し込み人数も落ち込んでいます。特に奥能登地方では、まだまだボランティアが必要な状況が続きそうです。
しかし、このところ毎日の募集人数が定員に満たない状況になっており、被災地のニーズに応えられないこともあるのです。現場としては、能登半島地震の記憶が風化してしまっているように思え、不安も感じています」
3月22日に輪島市と珠洲市、4月12日に穴水町と能登町をお見舞いされた天皇陛下と雅子さま。直接のご慰問以外にも、常に被災地を支援するご姿勢を見せられている。
「2月23日、天皇陛下の64歳のお誕生日に際して公開された写真は、輪島塗の懐紙箱、輪島塗の盆、珠洲焼のつぼなど、石川県の伝統工芸品について両陛下がお話しになっている場面のものでした。
能登半島地震で伝統的な文化や産業に携わる人々が困難な状況にあることを心配されているお気持ちを示されたのです」(前出・皇室担当記者)
“困窮する被災者たちを励ましたい”、両陛下はそんなメッセージを送り続けていらっしゃるのだ。
「3月に公賓としてブルネイの皇太子夫妻が来日した際、両陛下は輪島塗の宝石箱を贈られています。また今回の訪英でも、天皇陛下がチャールズ国王に輪島塗の漆器を贈られたのです。
皇室の国際親善において、贈答品の交換は重要視されています。しかし、何を贈られたかは必ずしも明らかにされるわけではありません。天皇陛下や雅子さまが、輪島塗の品々を贈り続けられているのは、石川県の被災者へ“私たちは、いつも皆さんに寄り添い続けています”という激励を伝えられるためなのでしょう。さらに言えば、世界の人々にも、震災のことを知ってもらいたいという願いが込められているのです」(前出・皇室担当記者)
日程はご検討中だというが、異例の3度目のご慰問では、多大な家屋損壊の被害を受けた七尾市や志賀町などがご訪問先の候補になっているという。
名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんはこう話す。
「天皇陛下が英国で輪島塗の漆器を贈られたのは、その事実が日本国内で報道されることで、能登半島地震の記憶の風化を防ぐためだと思います。“天皇皇后両陛下も能登を支援されている”ということを思い出し、国民が動き出すことを期待されているのでしょう。
また風化を防ぐという意味でも、3回目のご訪問は効果が大きいと思います。被災者の状況や、復旧の遅れが可視化され、国民が何かしたいという意識を持つことにつながっていくと思います」
昔から“堅牢優美”と評されてきた輪島塗。天皇陛下と雅子さまも、能登救済のために堅牢な意思を固められている。
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