お車を降りた美智子さまが、杖をつきながらも、右手を上皇さまの左腕に添えられ、ご自身の足で立たれ、歩かれている。11月16日、薨去された三笠宮妃百合子さまの弔問のため、三笠宮邸を訪問された際のシーンでは、居合わせたメディアの記者らに驚きが広がったという。
「90歳という年齢を考えれば、きわめて早いご回復ぶりです。ゆっくりではありますが、美智子さまが歩かれていることに、驚きの声が広がりました。
10月6日夕方に右大腿骨の上部を骨折され、8日早朝に東京大学医学部附属病院で手術を受けられてから、わずか1カ月ほど。今月中ごろには、車いすを使わずに生活できるようになったそうです。
御所の中では理学療法士などのサポートを受け、廊下や階段を、杖をつきながら歩行を行うリハビリに取り組まれ、順調に回復なさっていると聞いています」(皇室担当記者)
だが、高齢者にとって骨折は命にも関わる重大事。日本骨粗鬆症学会の認定医で、北九州総合病院副院長を務める福田文雄医師はこう話す。
「骨粗しょう症などで骨がもろくなった高齢者が転倒して骨折すると、そのまま寝たきりとなったり、最悪の場合生命にも関わります。
大腿骨近位部骨折は、3分に1件の割合で発生するほど多く、元どおりに歩けなくなってしまう割合は約36パーセント、また10人に1人は1年後に死亡しているというデータもあるほどです。
転んで骨折してしまう原因は、反射的に手をつくことができなかったり、骨粗しょう症であることが多いとされています」
危機的ともいえる状況を、美智子さまが乗り越えられた要因の一つは、“早期手術”があったと、前出の福田医師は指摘する。
「上皇后さまの場合は、骨折の2日後に手術を受け、さらにその翌日にリハビリを始められたと報じられています。世界基準では、高齢者の骨折は“準救急扱い”です。スウェーデンなどでは骨折後24時間以内、ほかの欧米各国でも36時間以内の手術が基準となっており、できるだけ早く退院し、もとの生活環境に戻ることが重要視されているのです。
いっぽう日本は、骨折の手術待機日数が平均3.8日という2022年の調査結果があるのが現状です。手術待機日数が短いほど、骨折前の日常生活に戻りやすくなるとされ、1日以内に手術を行えば、多くの人が1カ月ほどで元の状態に戻ることができるのです。
上皇后さまのケースでは、東大病院のチーム医療も含め、早期手術と早期リハビリ、2次骨折の予防を含めた理想的な医療システムが機能したといえるでしょう」