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「肺炎で亡くなるのは75歳以上の高齢者がほとんどですが、じつはこうした高齢者の70%以上に誤嚥が関係しているとされているのです。そこには、『飲み込み(嚥下)力の低下』が関係しています」

 

そう話すのは『肺炎に殺されない! 36の習慣』(すばる舎)の著者で、耳鼻咽喉科として30年以上の経験を持ち、現在は言語聴覚士、栄養士、看護師らと連携しながら嚥下障害の治療を専門的におこなう、西山耳鼻咽喉科医院の西山耕一郎院長。

 

「そもそも、『食べ物を飲み込む』という行為はわずか0.8秒の間におこなわれています。人間ののどはふだん気管が開いているのですが、飲食時はこの一瞬のうちに、『喉頭を上げる』『気管の入口を閉じる』『食道を開く』『食べ物を食道へ送り込む』という奇跡のような連携プレーを成立させ、食べ物や飲み物を食道から胃へ送っているのです。しかし、ほんのちょっとのズレや反応の遅れがあると、食べ物が気管に入り、むせたりせき込んだりしてしまいます。そしてそのわずかなズレや反応の遅れは、40〜50代から始まっているんですよ」

 

加齢とともにそのズレが大きくなり、徐々に飲み込みに支障が出るようになって、嚥下障害へと発展。そこから高齢者の誤嚥性肺炎リスクへとつながっていくわけだが、その“兆候”は、もっと早い段階から現れているという。

 

次のチェックリストは、そうした「飲み込み力」衰えのサインをまとめたもの。体力そのものや呼吸機能の衰え、不調も誤嚥を招くリスクになるので注意が必要だ。

 

□大きめの錠剤が飲みにくくなった
□自分の唾液でむせることがある
□歩く速さが遅くなった気がする
□食後に痰がからむことが増えた
□声が小さくなったと言われる
□食事中によくせきが出る
□以前より食事に時間がかかる
□1分間に20回以上呼吸をしている

 

「男性であれば、のど仏の位置にも注目してみましょう。首の半分より下にあるようなら、飲み込み力が衰えているサインです」

 

じつは、こののど仏こそ、「飲み込み力」の重要なカギ。

 

「のど仏は正式には『甲状軟骨の喉頭隆起』といい、女性にもちゃんと備わっています。そして、こののど仏をつり下げている『喉頭挙上筋群』という筋肉が、食べ物を飲み込んだときに、『喉頭蓋』という、のどのフタで気管の入口をふさぐことで、誤嚥を防いでいるのです。誤嚥の要因は『反射の衰え』や『喉頭の知覚の低下』もありますが、この喉頭挙上筋群の衰えがもっとも重要だと言えるでしょう。喉頭挙上筋群も加齢によって下垂していくのです。男女ともに、40代ごろからのど仏の位置は下がりはじめているんですよ」

 

「女性自身」2019年12月17日号 掲載

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