家じまいについて話す松本明子さん 画像を見る

「ここ数年、ずっと気にはなっているけれど、どこから手をつければいいのかしら……」

 

いま読者世代の多くから聞こえてくるのが、こんな実家の「家じまい」についての悩みの声だ。

 

親が施設に入ったり、他界してしまったりしたあとも実家を放置していると、倒壊や不審火などの被害も懸念される。年々、空き家率が上昇するなか、「早めに着手しなければ」と思いながら、モヤモヤを抱えている人も多いだろう。

 

地元との縁が切れてしまうことへのためらいや、遠方の実家に手をかける時間がないなど、家じまいに着手できない理由は人それぞれ。

 

そんななか、「いつかは地元に戻る可能性もあるかもしれない」という長年の思いを断ち切り、家じまいをやり遂げたのが、「実家じまい終わらせました!――大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方」(祥伝社)の著書もある、タレントの松本明子さん(56)だ。

 

あるじを失った実家を放置しておけば、思いもよらない出費がかさむだけでなく、残されたきょうだいの間での不和の原因にもなりかねない。そうした事態を避けるためのヒントはどこにあるのか。松本さんの体験談に耳を傾けてみよう。

 

「息子が成長して将来の進路が見えたとき、高松に帰る選択はもうないだろうと思い、家じまいを決断しました。それまでは、いつか芸能界を辞めて帰ることもあるのかも、と思っていたんですが」

 

松本さんは、家じまいのきっかけについてこう語る。’82年、15歳で高松から上京し、翌年に歌手デビュー。芸能界での立ち位置が見えた’93年に、両親を高松から迎えて同居を開始したという。

 

だが、松本さんはその後も空き家となった実家を手放さず、25年の長きにわたって、実家を維持し続けることを選択した。その結果、維持費としてかかったお金は総額なんと1885万円!

 

その経緯を『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で告白するや「わが家も同じ問題を抱えている」といった共感の声が多く寄せられ、ついには『実家じまい終わらせました!ーー大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』(祥伝社)という本まで出版することになったのだ。

 

■両親の相次ぐ他界で家じまいを意識することに

 

何をもって「家じまい」とするのか明確な定義はないが、松本さんが「実家をなんとかしなくては」と意識しだしたのは、’03年に父親が、そして’07年には母親が、相次いで他界してからだという。

 

「ですが、両親がやっとの思いで建てた家の処分には簡単に踏み切れませんでした。さらに、まだ幼かった息子が、私の地元と縁がつながっていく可能性があるのかどうか想像がつきませんでしたから」

 

そんな割り切れない思いを抱えていたなか、’11年に起こったのが東日本大震災。それを機に松本さんは、「万が一の場合の避難場所として活用しよう」と水回りを中心に実家のリフォームに着手した。

 

「修繕費は総額600万円かかりました。一方で実家の処分を考え始めていたので、矛盾するようですが、のちのちこのリフォームが無駄ではなかったことがわかります」

 

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