(写真・神奈川新聞社)
【時代の正体取材班=石橋 学】豊作を祈願し、実りの秋を喜ぶ朝鮮半島の伝統芸能、プンムルノリが19日、川崎市川崎区桜本で開かれた「日本のまつり」で披露された。地域の在日コリアンと日本人がともにパレードしながら民族打楽器チャンゴを打ち鳴らし、祭りを盛り上げた。
在日コリアンをはじめ多様なルーツを持つ人たちが多く暮らす桜本で約30年続く秋の風物詩。多文化交流施設・市ふれあい館のチャンゴクラブの子どもたちを先頭に有志の約300人が桜本商店街を練り歩き、共生の音色を響かせた。
高齢となった在日1世たちも車いすで参加。華やかなチマ・チョゴリ姿の4世世代の子どもたちに「かわいいねえ」と目を細めた金(キム)芳子(パンジャ)さん(86)は「昔は街中で民族衣装を着るなんて考えられなかった。子どもたちからも『朝鮮人と知られたらいじめられる』と止められて。それでも着たくてコートで隠したものだ。夢のよう」と笑顔を見せた。
朝鮮人として堂々と歩けて、うれしかった。いい街、いい時代になった」。そう話す徐(ソ)類順(ユスン)さん(91)は朝鮮戦争の砲火をくぐり抜けた経験を持ち、日朝・日韓関係をあしざまに伝えるニュースに心を痛め、胸騒ぎを覚える一人でもある。「街を一歩離れると『真逆の社会』が広がっているよう。日本中が桜本のようになればいいのに。悪いことが起きぬよう願いながら、来年また参加できるのを楽しみにしている」
まつりは桜本商店街振興組合の主催で32回目。さまざまな民族料理の出店のほか、みこしや和太鼓演奏、フィリピンのバンブーダンスなども訪れた人たちを喜ばせていた。
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