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(写真・神奈川新聞社)

 

約60年にわたり宿泊客を迎えてきた「箱根ホテル小涌園」(箱根町二ノ平)が10日、営業を終了した。家族客や団体の旅行者から親しまれただけでなく、新春恒例の東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)の観戦名所としても愛されてきた。従業員らに見送られ、チェックアウトした最後の宿泊客からは「寂しい」「ありがとう」などさまざまな声が聞かれた。

運営する藤田観光によると、同ホテルは1959年4月にオープン。客室数224部屋を誇り、大宴会場やレストランなどを複数備える大型宿泊施設として、多くの家族客や団体客を受け入れてきた。箱根駅伝のコースがすぐそばにあり、観戦スポットとしてもファンに知られていた。

一方、2000年ごろから個人客や外国人旅行客が増え、団体客が減少。ニーズの変化に施設の老朽化も加わり、同社が15年から取り組む「箱根小涌園」一帯の再開発の一環として閉館を決めた。

最後の晩を過ごそうと、前日には常連客やゆかりのある人ら約400人が宿泊。三重県鳥羽市から訪れた同ホテルの元従業員(77)は開業の年に就職し、約20年間勤め上げた。「人との接し方や思いやりなど、社会人としてイロハを教わった。今の自分があるのはここで働いたから」と話す。

家族で30年ほど前から毎年訪れているという東京都西東京市の男性(62)と妻(59)は「スタッフが親身で、来ると毎回リラックスできて楽しい時間を過ごせた」と感謝した。宿泊客にはチェックアウトの際、利用した客室のキータックがプレゼントされた。

箱根小涌園には昨年4月、新たな旗艦施設として「箱根小涌園 天悠」が開業。ツツジの名園として有名な「蓬莱園」には新たな宿泊施設を2020年東京五輪・パラリンピックまでの開業を目指し、今年中に着工する予定という。箱根小涌園の松田隆則総支配人は「箱根ホテル小涌園にはこれまで多くの宿泊客に利用してもらい、使命を終えた。これを節目とし、再開発はさらに加速する」と語った。

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