(写真・神奈川新聞)
地域に1人暮らしの高齢者が増える中、川崎市川崎区の鋼管通二丁目町内会(約240世帯)は単身高齢者らにプランターを配り、花いじりを通じた見守り活動を始めた。朝夕に玄関の外に出て水やりする時間をご近所とあいさつを交わす機会にしてもらう。街路を花々で彩りながら、自然な見守りの輪を広げていく試みだ。
同町内会は6年前から、役員や民生委員による単身高齢者宅の定期訪問、緊急時の連絡体制づくりなどの見守りのほか、病院の送迎付き添いや庭の草刈りなどのお手伝いを続けてきた。
新たに花いじりを通じた見守り活動を考えていたところ、同市役所田島支所が緑が少ない川崎区の緑化を目的にプランターを配る事業を検討していて、両者の思いが一致したという。
町内会は希望を募った上で、昨年3月から1人暮らしの高齢者ら10軒に計約30のプランター(横37センチ、縦20センチ、高さ15センチ)を配布。道路に面した塀に掛けるタイプで、最初だけ田島支所が育てたプリムラやビオラ、アリッサムなどの苗を植え、その後は町内会が土と花を3回ほど入れ替えた。
丸野喬敬会長(76)は「年を取ると外出するのがおっくうになりがちだが、家にこもらず、外に出るきっかけになれば」と期待する。「毎日、玄関の外で水やりに出れば必ずご近所と会い、自然に声を掛け合うようになる。健康にも良いはず」と話す。
さらに近くには市立大島小学校があり、花で彩る町内会の街路は通学路でもある。午前8時と午後3時の花の水やり時間が児童の登下校と重なり、高齢者による子どもたちの見守り活動にもつながるという。
1人暮らしの荒井文子さん(85)は「頂いた花がきれいに咲くとうれしいですよ。朝、登校中の子どもたちに『見て。きれいでしょ』と話し掛けると、『きれいだね』と声を返してくれます。町内会の皆さんが時々訪ねてきてくれて本当にありがたいです」と笑顔を見せていた。
町内会は今年、プランターを配る先を30軒に増やす計画といい、丸野会長は「予算規模も大きくなるので『花の銀行』と称し、寄付を募りながら、数を増やしていきたい」と話している。