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(写真・神奈川新聞)

 

横浜市港南区で写真館を営む田代充さん(35)が、今年の成人式当日に突然営業を取りやめた振り袖販売・レンタル業「はれのひ」(同市、破産手続き中)の被害者への支援メニューを用意し、利用を呼び掛けている。幾度となく一生に一度の瞬間に立ち会い、シャッターを切ってきた。思い出の一枚の大切さを知るからこそ、晴れの日を台無しにされた新成人の痛恨をわがことのように捉えている。「成人の日をやり直すお手伝いをしたい」とオファーを待っている。

 

田代さんは、上大岡駅近くで創業約70年の「田代写真館」の3代目。地域に根を張る写真館として祖父の時代から、町並みの変化やそこに暮らす人たちの喜怒哀楽を写真に収めてきた。

 

中でも、子どもの成長過程を記録するのは重要な仕事と自負する。「プレッシャーはかかるが、やりがいは大きい」

 

毎年、成人の晴れ姿を撮影するために80組ほどの親子が同館に足を運ぶ。そのたびに強く思う。「大人への第一歩を踏み出す子どもと、手塩にかけて育ててきた親とがたどり着いた成人式は、双方にとって大きな節目」。いつまでも色あせない一枚になるよう努めてきた。

 

だからこそ1月8日、心ない業者のために振り袖を手にできず、困惑や怒りの中で成人式への出席を諦めざるを得なくなった新成人のニュース映像を見て、がくぜんとなった。まぶたに、これまで撮影してきた新成人一人一人の顔が浮かんできたという。「彼らのためにできることはないか」

 

成人式から数日後には、3月までの期間限定で振り袖のレンタルや着付け、ヘアアレンジを無料で行い、撮影代も割り引く支援メニューを用意。期間中の利用はなかったが、はれのひ騒動から3カ月が経過した今も、できることはあるとの思いは変わらず、被害者から相談があれば柔軟に支援を行う考えだ。「(今年の)騒動で不安になった。安心できる地元の写真館で撮影をしたい」との声も寄せられている。

 

田代さんは自身の経験を踏まえて言う。「かけがえのない人を失ったとしても、在りし日の写真を見返すことで励まされたり、喜びや悲しみを共有したりしていると感じる時がある」。写真が秘める力を信じているから、一度きりの晴れ姿の写真を諦めないでほしいと願う。問い合わせは、同館電話045(842)1966。

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