(写真 神奈川新聞)
ペットを飼う単身高齢者が増える中、川崎市内の地域包括支援センターが4月に実施したアンケートで、8割超のケアマネジャーが利用者を支援する上でペットで困った経験があることが1日、分かった。高齢者がペットの世話をし切れず室内がふん尿で汚れたり、施設に入るためペットが取り残されたりして、介護職の負担になっている実態が浮かぶ。
調査は、かしまだ地域包括支援センター(川崎市幸区)が4月16~27日に実施。介護保険のケアプラン作成を委託している居宅支援事業所40カ所のケアマネジャー(各事業所1人ずつ)を対象に行い、28カ所から回答を得た。
その結果、「ペットで利用者の支援で困ったことはあるか」との問いには82%(23人)が「ある」と回答。どんなことで困ったかを選択肢方式(複数回答可)で聞いたところ、「サービス提供時に支障があった」が13人で最多。次いで「訪問時のペットの対応」(11人)、「在宅困難になりペットの対処で困った」(8人)と続いた。
記述欄では「利用者がペットの世話をできなくなり、排せつ物の悪臭で困った」「認知症で犬のしつけができておらず、訪問時にかまれた」などを挙げた。「(サービス外の)ペットの世話や清掃を依頼されてしまった」などもあった。
このほかに「在宅困難となり、ペット同伴可の有料老人ホームも選べず、取り残されたペットの対応に苦慮した」などが多数ある一方、「ペットの世話を理由に利用者が入院を拒み、病状が悪化した」との事例もあった。
同センターの深井純子センター長は「多くの介護職に共通する問題であることがあらためて分かった」と説明。「限られた時間で決められたサービスを提供するヘルパーらの負担になっており、今後もますます大きな問題になると思う」としている。
こうした問題にボランティアで取り組む「かわさき高齢者とペットの問題研究会」の渡辺昭代代表は、「これまで人の福祉と動物の福祉が別々に語られ、連携が取れていなかった。両分野に関わる人たちが協力して対処しなければならない」と指摘。「動物を飼うことは悪くないが、飼い主が最後まで責任を持つよう啓発が求められる。自身の入院や不測の事態に備え、ペットの預け先となる親族の連絡先を意思表示しておく仕組みも必要だ」と話している。
アンケート結果の詳細は、12日午後1時半から同市高津区の高津市民館で開かれる講演会(同研究会主催)の中で、同センターの深井センター長が報告する。「“人の福祉と動物の福祉”その接点を考える」をテーマに、宮前区地域みまもり支援センター担当部長、市動物愛護センター所長らの講演も行われる。参加費無料で定員40人。
問い合わせは同研究会電話080(4118)6591。