沖縄本島北部の豊かな森の中にある東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場=7月14日(写真・琉球新報社)
西表石垣島、慶良間諸島に続き、やんばる国立公園が誕生する。貴重な野生動植物が生息・生育している生態系を高く評価する政府は、2018年をめどにやんばるの森を奄美大島、徳之島、西表島とともに「奄美・琉球」として世界自然遺産登録(ユネスコ)を目指している。だが、軍事演習などで環境保全とは対極の活動をする米軍北部訓練場と隣り合わせの異様な立地環境にあり、環境保全の重要性を訴える非政府組織(NGO)のメンバーらは国立公園化を評価する一方、「現状の指定区域・条件では世界自然遺産登録は非現実的だ」と懸念する。
今月初旬に米ハワイ州で開催された国際自然保護連合(IUCN)の総会では、外来種問題がクローズアップされただけでなく、沖縄本島の外来生物対策を求める勧告が採択された。やんばるの森の目と鼻の先では辺野古新基地建設が予定されており、外来種が混入する恐れのある土砂搬入を中止すべきだと勧告された格好だ。
日本自然保護協会の安部真理子さんはやんばるの森について「国立公園の指定自体は国がするものだが、世界自然遺産登録は世界の厳しい目をもって判断される」と指摘する。
IUCNはユネスコの世界遺産委員会に対し、自然遺産に関する技術的な評価を下す公式の諮問機関の役割を持っていることに触れ、「日本政府が過去4度のIUCN勧告を無視しており、今後さらに基地建設を強行すれば登録は厳しいだろう」と話す。
沖縄環境ネットワークの真喜志好一さんは「防衛省と外務省は環境破壊活動を推し進め、環境省は自然保護を訴える。世界の常識で考えれば、日本政府の矛盾は理解できるものではない」と断言する。
米軍北部訓練場のヘリパッド建設工事が完了すれば、やんばるの森にはオスプレイなど米軍機の騒音が鳴り響く。「野生動植物の楽園と言えるはずがない」。真喜志さんは、小規模の開発や自然破壊であっても許されない特別保護地区の拡張を訴えた。
【用語】やんばる国立公園 自然公園法に基づき環境省が指定し、管理する区域。希少種を多数含む固有の生態系と、国内最大級の亜熱帯照葉樹林の保全が目的。国頭、東、大宜味3村にまたがるやんばる地域の陸域1万3700ヘクタールと海域約3700ヘクタール。沖縄海岸国定公園の一部も編入する。