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周辺住民への爆音被害などについて判断が下される米軍普天間飛行場=16日、沖縄県宜野湾市 (写真・琉球新報社)

 

沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の周辺住民が原告となり、米軍機の飛行差し止めや損害賠償を求めている第2次普天間爆音訴訟の判決が17日午前10時、那覇地裁沖縄支部で言い渡される。騒音にさいなまれる原告らの「差し止め」という訴えを無視するかのように10月、普天間飛行場のほか嘉手納基地にも複数の外来機が飛来し、爆音をまき散らした。「祖父が『戦いが来たぞ』と飛び起きた」。周辺住民から自治体に寄せられた訴えからは、沖縄戦の記憶や健康被害に苦しめられる住民の実態が浮かび上がる。

 

米軍の普天間飛行場と嘉手納基地に外来機が飛来した10月、住民から周辺自治体への苦情が急増した。「頭が狂う」など精神的苦痛や「耳が痛くなった」「頭痛も出てきた」など健康被害を含む切実な訴えが寄せられた。騒音に「戦(いくさ)どーい(戦が来たぞ)」と飛び起きた男性の話など、沖縄戦の記憶を呼び起こされる戦争体験者の姿も浮かび上がった。専門家は「心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性が高い」と指摘している。

 

普天間飛行場で10月17日から外来のFA18戦闘攻撃機が飛来し、19日に宜野湾市上大謝名公民館で本年度最大騒音116・7デシベルを測定。市に17~21日で具体的な健康被害を含む苦情44件が寄せられた。

 

市大謝名の女性は17日午後8時23分「外にいると耳が一時的に聞こえなくなって少し痛くなった」と訴えた。18日午前9時27分に市に電話を入れた男性も「耳も痛く、ちむどんどんする(動悸(どうき)がする)」と述べた。同午後9時56分、別の女性が「頭痛がしてきてものすごく困っている」と語った。

 

「墜落かと思った」(17日午後8時12分、市真栄原の女性)、「住宅が揺れる」(19日午後4時55分、市大山の女性)など騒音の実態を訴える市民もいた。

 

軍用地主の男性=市野嵩=は19日午後1時41分、「最近、昼寝もできないほどの爆音が続いている。このような基地はいらないので早く(米軍に)返還させて」と求めた。市嘉数の男性は「世界一危険な市だと思う。できれば住みたくないほどだ」と訴えた。

 

嘉手納基地では19、20の両日未明、外来のF16戦闘機6機が離陸し、100デシベル前後の騒音が発生。両日で嘉手納町に30件、沖縄市に4件の苦情があった。

 

うるま市では19日、市美原で午前2時32分に96・7デシベルが測定された。市に届いたはがきには「認知症の祖父が『戦(いくさ)どーい(戦が来たぞ)』と飛び起きた」「夜中に目を覚まし、その後寝られなかった」などとつづられていた。

 

嘉手納町西浜区の女性は19日午前2時35分「地割れかと思うほどの音で夫婦そろって起こされた。胸がどきどきしている」と訴え「頭が狂う。沖縄だけが我慢しなければいけないのか。はらわたが煮えくり返る」と語っていた。

 

町東区の男性は同日午前8時37分「熟睡しているところを起こされ、寝ようと思ったらまた爆音。町も運用上の理由などと米軍に言わせず、基地撤去を求めるくらい強く追及してやめさせるべきだ」と求めた。

 

精神科医の蟻塚亮二氏は「戦争体験者がフラッシュバック(再体験)するきっかけとして米軍機の騒音は飛び抜けて多い」と指摘。「爆音によるストレスで不眠や頭痛、吐き気、発熱が引き起こされる可能性もある」と分析した。(明真南斗、清水柚里)

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