「お魚戦隊デーラカージャー」の「赤まちレッド」(左)と、考案した上原一心さん =2日、那覇市港町の泊いゆまち
魚をモチーフにしたご当地ヒーロー、じわじわ活動中-。全身をきらびやかな衣装で包み、イベントで魚の魅力をPRする3人組がいる。その名も「お魚戦隊『デーラカージャー』」。考案した魚の仲買人、上原一心(かずみ)さん(35)=糸満市=は「子どもたちが魚を好きになるきっかけになれば」と話す。
ヒレ付きのマスク、金色の手袋、ぽっこりしたビール腹…。2日、那覇市の泊いゆまちにマスクマンが現れた。買い物客はぎょぎょっと驚き、女の子は泣き出した。
「こちらはアカマチの化身、お魚戦隊の『赤まちレッド』です」。鮮魚店の前で上原さんが言った。
千冊以上の漫画本を集め、幼少時からイラストを描くのが好きだった上原さん。「戦隊ものなら、子どもも興味を持ちやすいのではないか」と考え、2年ほど前にデーラカージャーを描き出した。
高級魚のアカマチ、アカジンミーバイ、マクブをそれぞれキャラクターにした。キャラや魚の調理例を紹介したカードを作成し、数千枚刷った。
熱の入った上原さんは3体の衣装をオーダーメードし、着ぐるみ、下敷き、バッグと関連グッズを次々開発。費用は全て自己負担で、「衣装代だけで乗用車が買えるほど」と苦笑する。
そんな上原さんに対し、同業者の一部からは「魚屋が何をやっているんだ」と冷ややかな見方があったという。それでも上原さんは「楽しいからやめられない」と笑う。睡眠を1日4時間ほどに削ってイラストを描き、これまでに30種類近くの魚キャラを生み出してきた。
お魚戦隊は今年に入ってイベント出演を始め、華麗な踊りも披露している。上原さん自身も競りが休みの日は保育園などを訪れ、着ぐるみ姿で子どもたちに魚をアピールしている。
21歳で仲買人になった上原さんは言う。
「海人も後継者不足だし、魚の個体数も減っていると感じる。孫の代でも食卓に魚が並ぶように、今、海の問題に取り組まないといけない。お魚戦隊が海を守る力になればいいと思う」
ところで、お魚戦隊の“正体”は?
「ヒ、ミ、ツです。子どもたちの夢も守りたいので」
上原さんがニッと笑った。
(真崎裕史)