米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが2016年12月、沖縄県名護市安部の沿岸部に墜落大破した事故で中城海上保安部は24日、航空危険行為処罰法違反の容疑で、氏名不詳のままオスプレイを操縦していた機長を那覇地検に書類送検した。米側は事故原因について「機長のミス」とする事故調査最終報告書を同保安部に提供したが、機長の氏名や所属は示されず、容疑者を特定できなかった。公務中の米軍人による犯罪で、容疑者の特定など米側の捜査協力を義務づけない日米地位協定が、日本側の捜査の壁になっていることが改めて浮き彫りになった。
今年12月の時効まで3カ月を切り、今後も機長や搭乗者につながる新たな情報が米側から示される可能性が薄いことから送検に踏み切ったとみられる。中城海上保安部は、捜査に関する米軍との協議内容や頻度に関して明らかにしてない。
機長の書類送検容疑は、空中給油訓練のため操縦していたオスプレイの速度を保つ業務上の注意義務を怠り、空中給油機のホースと接触して機体の一部を損傷させ、着水して機体を破壊させた疑い。米軍事故調査報告書は事故原因について「困難な気象条件下で空中給油訓練を行った際のオスプレイの機長のミス」と断定している。
米側の最終報告書などによると、16年12月13日午後9時すぎ、残り燃料の警告が出たオスプレイが空中給油機と給油ホースを接続しようとし、鹿児島県・与論島の与論空港南東約15キロの海上で、オスプレイのプロペラとホースが接触。同9時半ごろ名護市安部の浅瀬に墜落し大破、搭乗員2人が負傷した。
同保安部は「関係省庁と連携して米軍当局に捜査への協力を求めつつ、提供された事故調査報告書の内容を精査した。現場海域の調査や浮遊物の確認作業など必要な捜査は終えた」としている。同保安部と米側との間で事故に関する協議は行ってきたが、機長の事情聴取は行われていない。
海保関係者は「機長がけがを負ったのかなど詳しいことは分からない。あの場所に着水するという機長の判断が正しかったのかなど、判断がつかない」と述べた。