閑散とし人通りの少ない龍潭付近=28日、午後 画像を見る

沖縄を代表する観光地として年間約280万人が訪れる首里城が焼失し、30日で1カ月が経過した。首里城の周辺を訪れる観光客は減少し、11月の売り上げが落ちた飲食店もある。首里城近隣の事業者の経営にも影を落とし、県内の支援機関にはさまざまな相談が寄せられる。首里城が単なる観光や文化の施設ではなく、周辺住民の暮らしに直結する重要な拠点となっていた状況が示された。

 

首里城火災を受け、首里城周辺を訪れる観光客は減少し、飲食店や駐車場を運営する周辺事業者は頭を悩ませる。首里城下の龍潭では火災後しばらくは、池の向こう側にある焼けた首里城を眺めるため地元住民や観光客で埋まっていたが、1カ月がたち、立ち止まる通行人も少なくなっている。

 

龍潭からほど近い飲食店「あしびうなぁ」は、昼時にもかかわらず客の入りが少なかった。従業員の金子京子さんは「火災前と比べて客は減っている。例年同時期と比べても感覚として4割ほど売り上げも落ちた」と話す。

 

だが、つらいことばかりではない。これまで客のほとんどが観光客だったが、「火災後に『応援しに来たよ』と来店する地元の方もいる」と笑顔で話す。

 

近隣のコインパーキングは空きが目立つ。約40台収容可能な駐車場に5台だけと、物寂しさを感じさせる。パーキング事業を手掛ける県内企業の担当者は「火災の影響で売り上げは下がったはずだ。駐車場オーナーからも心配の声が上がっている」と明かす。契約駐車場や近隣店舗と提携したサービス券の導入も検討しているという。

 

琉球王朝時代の「ぶくぶく茶」が飲める茶房「嘉例」の店内には、沖縄の観光名所を紹介するチラシや本が多くある。「特に火災の影響はない」と断言する、店主の女性は「観光バスは首里城公園内に出入りしていたため、もとから観光客が店の周辺や首里の街中まで出てきて歩くことはなかった」と指摘した。

 

その上で店主は「火災が発生した今だからこそ、観光客には首里の裏路地や史跡を散策してほしい」と語り、「街に人を呼び込むためにも、観光バスをモノレール駅に停めて、観光客が街を歩けるような工夫が必要だ」と力を込めた。
(石井恵理菜)

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