首里にあるとってもレトロな映画館「首里劇場」がリニューアルすると聞きました。大人向けの映画を上映していたようですが、どんな感じで新しくなるのでしょうか? 調べてもらえるとうれしいです!
(浦添市 昭和のロマンさん)
「本日はご来場ありがとうございます。館内は禁煙になっております。それでははじまりーはじまりー!」
上映前に元気よく映写室から呼びかけるのは、首里劇場の金城政則館長(66)です。戦後間もない1950年に開館した首里劇場は一歩踏み入れると(いや、踏み入れる前から)昭和にタイムスリップできる空間です。
館長の決断
金城館長は、初代館長のおじ、2代目の父から引き継ぐ形で2003年から館長として沖縄のピンク映画界をけん引してきました。
カメラを向けると必ず「やーっ!」との掛け声と共に空手の型を決めてくれるユニークな金城館長。もともと首里劇場は成人映画の上映ではなく、一般映画やお芝居で人々を楽しませてきました。
しかし時代の変化とともに一般映画が斜陽になり、「20年前か30年前」(金城館長)にピンク映画の上映にシフト。全国的にも数少ないピンク映画館として注目を集めてきましたが、ネットの普及などで需要が減り、ことし1月31日を最後に上映を一時ストップしていました。
「お告げが来たんですよ(笑)何から来たのかは分からないですけど。先祖かもしれないし」。その決断のタイミングを語ります。
原点回帰
2カ月間の準備期間を経て、5月1日からリニューアル。原点に回帰し、名画座としての営業をスタートさせました。初日に公開したのは吉永小百合主演の「あゝひめゆりの塔」。
「名作をセレクトするんですよ」。高校を中退してからずっと首里劇場で働いてきた金城館長は、数多くの映画を見てきました。「仕事しながらだから、チラチラ観る感じだけどね」と謙遜しますが、約50年間も培ってきた“映画の選球眼”で懐かしくも新しい視点を提供します。
「映画館が新しいから良いとかそんな問題じゃなくて、大事なのは映画自体ですから。良い俳優が出ている作品とか、そういったのを選んでいきたいね」。入場料が女性500円、男性800円、障がい者500円と安価なのは「みんなの居場所をつくってあげたい」という思いからです。
リニューアルオープンに先立ち、4月18日には「首里劇場原点回帰プレイベント」の一環で、映画「アリシャ〈夏〉」(島田昇和監督)を上映しました。
ピンク映画館から名作映画館への原点回帰とともに、金城館長が思い描くもう一つの原点回帰は「劇場」としての活用。
「クラシックコンサートなんかを(すぐ近くの)県立芸大の学生ともやっていきたいです」と展望を語ります。古くて朽ちた劇場は、既存のホールとはこれまた違った庶民的な響きを聴かせてくれるのでしょうか。70年以上の歴史を誇る劇場の雰囲気とクラシック音楽がどうマッチするのか、楽しみです。
今回のプレイベントを主催した島田監督は、10年以上も前に初めて訪れた首里劇場の印象を「興味本位で入ってみたんですけど、第一印象は最悪でしたよ(笑)」と振り返ります。しかし撮影などを通して館長や劇場と関わっていくうちにその魅力にのめり込んだ一人でもあります。今回のリニューアルについて、こう話します。
「ぜひ女性にももっと来てほしいです。『首里劇場』を体感してほしい。アトラクション的に訪れるのも良いと思うんです。新しいシネコンの快適さとは対極にある“昭和ノスタルジック”がここにあります」
(2021年5月5日 週刊レキオ掲載)