SPEED今井絵理子さんの出馬で考える「障害者問題の現実」

投稿日: 2016年03月03日 06:00 JST

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ダンス&ボーカルグループ「SPEED」のメンバーで歌手の今井絵理子さん(32)が、夏の参院選の比例代表候補として自民党から出馬すると先日発表されました。今井さんは聴覚障害のある長男(11)を育てるシングルマザーとして、これまで講演や執筆などを通じて障害者のためのさまざまな活動に積極的に取り組んできました。自民党としては、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」や「女性活躍」 の実現に向けての象徴的な候補者として、また若い世代や無党派層への支持拡大を促す候補者として、期待を寄せているようです。

今井さんは、会見で手話を交えながら立候補の抱負を語りました。21歳のときに生まれた息子が聴覚障害を患っており、そのとき初めて障害に関する現実を知ったと語っています。それまでは歌しか知らなかった彼女が、出産をきっかけに同じ境遇のお母さんたちや障害のある子供たちと出会い、そして、そこから障害者が直面している差別などの現実を知るようになったそうです。

たしかに障害者問題の多くは我々の無知に起因するところがあります。あたかも自分は障害と永遠に無縁で関係のないと思い込んでいる人が大多数ではないでしょうか。しかし障害は先天的原因で発生するものより、病気や事故といった後天的な原因によるものが圧倒的に多い。それが意味することは、いつでもそして誰でも障害者になる可能性があるということです。にもかかわらず我々は障害についてあまり考えず、問題として扱われることも稀でした。

また伝統的に障害は個人的な“不幸”として捉えられ、表に出さないようにする傾向も強かった。しかし北欧などの先進国を中心に少しずつ障害への社会的責任が強調されるようになり、「障害者が日常生活で経験する差別や困難は、社会が明確な問題意識を持ち、環境を整備することで軽減できる」と考えられるようになりました。そして日本を含む多くの国でも、障害者の社会参加や権利を強化する取り組みがなされてきました。具体的には障害者教育の支援強化や福祉サービスの充実化などを通じ、障害者が生活しやすく働きやすい社会の実現に向けて、さまざまな施策や活動がなされてきたのです。ただこうした努力にもかかわらず、依然として多くの障害者が雇用先を確保することは難しく、非障害者に比べて所得が低かったりするなど厳しい現実は続いています。

政策の世界には、オーナーシップとパートナーシップという考え方があります。政策的な取り組みを自分たちのものとして認識することがオーナーシップ、外側の人たちとの連携がパートナーシップです。今回のように、今井さんのような障害者の子どもを育てる当事者が同じ境遇のお母さんたちの声を集めて直接政策へ反映していくオーナーシップ型の取り組みと並行し、その取り組みを外側にいる障害者ではない個人や家庭、学校、職場、地域社会などとパートナーシップを築きながら、ともに政策を推進していくことが理想です。その際に大切なことは、この社会を生きる我々みんなが障害を自分のものとして認識すること。そして、障害者と非障害者の間の差異を超えて共に生きる社会を築くことではないでしょうか。

今井さんは、今回の記者会見の最後にこう述べています。「私は、政治は希望だと思います。息子が大きくなったときに『この国でよかったな。この国で生まれてよかったな』と思うように、これから頑張っていきたいと思います」。なんて素晴らしい決意でしょうか。彼女が見たいその未来に向けて、みんなで手をつないで歩んでいきたいものです。

 

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ジョン・キム

'73年韓国・大邱生まれ。19歳で日本へ国費留学し、ハーバード大、慶應義塾大など世界の大学を渡り歩く。組織に縛られない「ノマドワーカー」の代表的存在として注目を集め、社会人版「キムゼミ」には多くの人が詰めかける。『媚びない人生』(ダイヤモンド社刊)、『来世でも読みたい恋愛論』(大和書房刊)など著書多数。
 

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