第9回 新緑を楽しむ庭~高桐院

投稿日: 2015年04月21日 00:00 JST

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京都は庭園の宝庫。しかし、たくさんありすぎて、どこを優先的に見て回ればいいか迷う人も多いだろう。本連載では、京都のガーデンデザイナーであり、京都の庭園ツアーも主催する著者が、景観の素晴らしい庭園から、いるだけで心癒される穴場庭園まで、行って絶対損はない庭園を案内する。近場にあるオススメの立ち寄りスポットも併せてご紹介。


著者:烏賀陽 百合(ウガヤ ユリ)

imageガーデンデザイナー。庭、ベランダ、花壇のデザインやコンサルタント。ガーデニング教室の講師。京都の庭園ツアー
<プロフィール>
京都生まれ、京都育ち。同志社大学文学部日本文化史卒業。兵庫県立淡路景観園芸学校、園芸本課程卒業。カナダ・ナイアガラ園芸学校で園芸、デザインなど3年間勉強。ナイアガラ植物園の維持管理も行う。イギリス・キューガーデン付属のウェークハースト庭園にてインターンシップを経験。現在京都を拠点に庭のデザインやカウンセリング、マンションのベランダや小さな庭でもできるガーデニングを指導。気軽に植物を楽しめ、生活の中に取り込めるガーデニングを提案している。また東京、名古屋、京都、大阪などでガーデニング教室の講師を務める。現在、東京・南青山のカフェOVE、目白台運動公園、鎌倉のNaivy Yard、京都の町家ギャラリーniterashinkaなどで定期的に教室を行っている。UR都市機構の団地にて住民交流のためのガーデニング教室も開催。これまで24ヶ国を旅し、世界中の庭を見てまわる。庭にまつわるエピソードやその国の文化・歴史をブログ「庭園小噺」にて紹介(http://ugayagarden.blogspot.com/)。また友人とEpic Kyotoというユニットを立ち上げ、京都の美しい庭園や美味しいお店をfacebookで紹介。京都の庭園ツアーも行っている(Facebook→Epic Kyoto)。 


 

★庭を見るのに一番の季節

桜の花が終わると京都は普段通りの静けさを取り戻す。そして新緑の季節が始まる。

 

新緑の頃は私が京都で一番好きな季節。庭は新緑の木々でキラキラして眩しい。苔までも新芽がキラキラして美しい。

庭を見るのはこの季節が一番だと思う。人も少なく、湿気もなく、底冷えもしない。

新しく芽吹く緑の生命力が京都に溢れている。

 

新緑は古来「青葉」と呼ばれた。西行が歌った歌に、

 

「ほととぎす きくをりにこそ夏山の 青葉は花におとらざりけり」

(意味) ホトトギスの声が聞こえてくると夏の山の青葉(新緑)は、春の桜に勝るほど美しく素晴らしい。

 

というものがある。まさに今の季節の歌。これを詠むと、ああ!わかるよ!西行!と言いたくなる。桜よりも躍動感のあるキラキラした青葉の美しさに胸がときめく気持ち。

桜は華やかで、紅葉は艶やか。新緑はみずみずしく、息吹きを感じさせてくれる。新緑をわざわざ見に行くことに私は幸せを感じる。桜はお花見、秋は紅葉狩、夏は青葉狩!と勝手に命名したいほどだ。

 

この季節、京都の東山は新緑の樹々で盛り上がった様に見える。それはまるで美しい織りの絨毯のようで、鮮明に浮かんで見えるのだ。桜の時期の春霞のぼんやりした山の姿も美しいが、新緑の季節にだけ見られるくっきりとした山の景色にハッとさせられる。

 

★庭も参道も素晴らしい

新緑を見に行くとしたらどこがいいか?

正解は紅葉が有名な場所に行くこと。秋に人がいっぱいの場所も今の季節は誰もいない。青葉狩を静かにゆっくり楽しめる。

東福寺、真如堂、大原の三千院…どこも紅葉の新緑が素晴らしい。

 

その中でも私が一番お勧めしたいのは大徳寺の塔頭、高桐院(こうとういん)。

ここは秋の紅葉が有名で、かつてはJR東海の「そうだ京都に行こう」のポスターにも選ばれ、秋になるとたくさんの観光客が訪れる。

もちろん秋の紅葉はとても美しい。しかしこの季節にしか楽しめない景色がある。

 

高桐院は1601年に細川忠興(三斎)が父細川藤孝(幽斎)のために創建した寺。1645年83歳という高齢で逝去し、遺言により遺歯が高桐院に埋葬されて以降細川家の菩提寺となった。

 

高桐院の庭は「楓の庭」と呼ばれている。苔と楓の木が数本、そして背後に竹林というとてもシンプルな庭。自然風景式庭園というスタイルで、まるで自然の山の中に居るような風景となっている。

作られたのは江戸初期。しかし苔の庭になったのは昭和に入ってからで、今では庭一面に苔が広がっている。

 

ここの庭は中国の故事や仏教の世界観をテーマにしたものでなく、自然の景色を楽しみ、眺める庭になっている。堅苦しさのない居心地の良いところ。拝観料にプラス500円でお抹茶とお菓子も楽しめるので、縁側に座ってのんびりと過ごせる。

竹林の深い緑、もみじの青葉がキラキラ光る色、苔は木洩れ陽が射してなんとも言えない輝きを見せる。様々な緑の色が目の前に広がり、楽しませてくれる。

 

こういう瞬間を目の当たりにできることが、京都での一番の贅沢だと思う。

贅沢というのは人それぞれ価値観の違いがあるけれど、ここでのゆっくりした空間は誰もが、贅沢!と思うのではないだろうか。

 

高桐院はお庭も素晴らしいが、入口の門からお寺へと続く参道は本当に美しい。知り合いのカメラマンの方もこの道が好きで、季節を変えて何枚も写真を撮っておられた。

すっと続く敷石の道に竹林ともみじと苔の緑が鮮やかに映える。この道を歩く瞬間もとても贅沢だ。ここでは美しいものしか目に入らない。

 

★京都で一番好きな庭

実はここの高桐院には子供の頃からよく母に連れられて来ていた。

子供の時に住んでいた家から徒歩20分ほどの距離にあり、休日の午後にふらりと散歩に来るのにちょうど良い場所だった。

季節はやっぱり新緑の頃。私の母もお庭が好きな人なので、一緒にぼんやりともみじを眺めたりしていた。

 

ここには細川忠興の妻で、明智光秀の娘だった細川ガラシャ夫人のお墓がある。絶世の美女で大変聡明であった彼女の人生は、本能寺の変で一変する。

反逆者の娘となった彼女を忠興は幽閉し、外界から遠ざけた。一切の外出を禁じたのだ。

そんな孤独な彼女を救ったのがキリスト教。忠興の目を盗み、洗礼を受けクリスチャンとなった彼女は「ガラシャ」という洗礼名をもらう。そして幽閉生活の中で平安を得る。

 

しかし豊臣秀吉の死後石田三成が挙兵し、諸大名が東軍に味方しないよう妻子を人質に取ろうとした。大坂城内の細川屋敷で西軍の襲撃を受け、人質になることを拒否したガラシャは自害という道を選ぶ。その時38歳だった。

そんな彼女の数奇な人生についてここの庭で母が話してくれたことを今も覚えている。母もクリスチャンなので、ガラシャ夫人に何か感じるものがあったのかもしれない。

 

京都で一番好きな庭を尋ねられたら、必ず高桐院と答える。ここの庭の景色が好きなことはもちろんだが、小さい時の思い出も重なって、特別な庭に感じている。

ちゃんと数えたことはないが、100回以上は訪れている。春夏秋冬どの季節も良いが、一番印象に残るのはやはり新緑の季節。

私の庭好きは、ここの庭のもみじや苔の美しさから始まったのだろう。

 

母と高桐院に行った帰りは、必ず近くの今宮神社の参道にあるあぶり餅屋に立ち寄った。子供の頃はここに連れてきてもらうことが一番の幸せだった。

あぶり餅とは、一口サイズのお餅にきな粉をまぶし、竹串に刺して炭火で軽くあぶり白味噌の甘いタレをかけたもの。

この白味噌のタレが本当に美味しい。幼い私はこのタレが好き過ぎて、お餅を食べた後いつもお皿をペロペロ舐めていた。怒られても舐めることをやめないので、母はあぶり餅屋に来る時は必ずスプーン持参で来るようになった。

私のスイーツ好きも、やっぱりここから始まったようだ。


オススメのお店:あぶり餅「かざりや」と「一和」

今宮神社横の参道に並ぶ2軒の店。参道に一歩踏み入れると、両方の店からオバちゃんが出て来て客引き合戦が始まる。しかし京都の人は子供の頃からそれぞれ行く店が決まっていて、もう一方の店に一度も入ったことがない、という話をよく聞く。私の家もそうだったので、今でも必ず同じ店に入ってしまう。味はほとんど変わらないはずなのだが、まだ確認したことがないからわからない。
あぶり餅の歴史は古く、なんと平安時代。応仁の乱や飢饉のとき庶民に振舞ったともいわれる。親指大のお餅にきな粉をまぶし、竹串に刺して炭火であぶる。なのであぶり餅。そこにそれぞれの店秘伝の甘い白味噌のタレをかけて食べる。
大徳寺に来た時は必ずあぶり餅を食べる。誰もが絶対美味しいと気に入ってくれる。海外の人も大好き。

「一和」
住所:京都府京都市北区紫野今宮町69
TEL:075-492-6852

「かざりや」
住所:京都市北区紫野今宮町96
TEL:075-491-9402

[以下、「一和」「かざりや」とも同じ]
営業時間 10:00~17:00
定休日 毎週水曜日(但し水曜が1・15日・祝日の場合は営業し、翌木曜が休み)
あぶり餅 一皿¥500(お茶付き)  お土産 ¥1500(3人前から。竹の皮で包んである)


高桐院

大徳寺塔頭。1601年(慶長6)、江戸時代初期の武将で茶人としても有名な細川忠興(三斎)が父、幽斎の弟、玉甫紹琮を開祖として建立した。細川氏の菩薩所。

三斎は茶人としては利休七哲の一人といわれる名手で、当院の書院は利休の邸宅を移築したものといわれる。書院に続く茶室松向軒は三斎好みの二帖台目で、三帖の水屋がつき、壁や天井にも趣向が凝らされていて有名である。境内にある三斎の基標の石灯籠も利休が三斎に贈ったものと伝えられている。書院の庭は江戸初期の作庭。本堂の前庭は楓の樹を巧みに配しているのが特色。寺宝の李唐筆「絹本墨画山水図」2幅は南宋初期山水画の名作で国宝。

境内には三斎と夫人ガラシャの墓、近世初期の歌舞伎踊りの名手、名古屋山三郎、出雲阿国の墓がある。

住所:京都市北区紫野大徳寺73-1
拝観時間:9:00~16:30(閉門時間16:20)
休日:6月7日~6月8日開祖忌、5月6日宗全忌
拝観料:大人 400円 中学生300円 小人200円

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