「4回転半に挑戦したい気持ちはすごく強いです。これから戦うにあたり、自分の武器を付け加える義務感がある。武器をつくって令和に向かって頑張っていきたいです」
新時代に向けて意気込みを見せるのは羽生結弦(24)。4月20日、地元・仙台で自身の姿が描かれたモニュメントデザイン発表式が行われた。冒頭の発言はそのなかで語ったものだ。3月の世界選手権でネイサン・チェン選手(19)に敗れ、2位に終わった羽生。4月に行われた世界国別対抗戦は右足首の治療のため欠場したが、すでに“打倒ネイサン”に向けて動き出している。目標に掲げている4回転半ジャンプを武器に、王座奪還を目指しているというのだ。
だが、そんな羽生を脅かす衝撃の予告が――。浅田真央(28)を育てた重鎮・佐藤信夫コーチ(77)が、『朝日新聞』4月17日付朝刊への寄稿でこうつづっていた。
「女子は3回転半時代がやってきた。男子は5回転時代が来るのではないか――」
昨年2月の会見で羽生は「5回転が主流になるということは、まずこの50年においてないだろう」と語っていた。しかし、5回転の挑戦に名乗りを上げたのが宇野昌磨(21)だ。先日の世界国別対抗戦終了後に、彼はこう語っている。
「やっぱり僕は何か新しいことをやっているときがいちばん楽しめているのかな、と。楽しめることを探して、それが5回転というものになるのかなと思います」
宇野から飛び出した驚きの“羽生越え宣言”。佐藤氏もこう太鼓判を押す。
「軸が細いほど速く回ることができます。宇野選手は軸の細いジャンプを跳べていますから可能性はあります」(前出・『朝日新聞』)
現在の採点方式で5回転は想定されていないため、成功しても得点にはつながることはない。しかし、5回転時代に突入すると大きな加点となるはず。そうなると、現在の勢力図が一気に変わる可能性もあるだろう。にわかに浮上した5回転時代論争。羽生から宇野への“主役交代”の時は近いのか。元フィギュア選手の佐野稔さん(63)はこう語る。
「宇野選手に限らず、22年の北京五輪までに5回転ジャンプを完成させるのは難しいと思います。しかし、だからこそ宇野選手の発言は大変勇気あることです。大きな進歩だと思いますし、僕は絶対的に評価します。今回の世界選手権の結果からみても、難易度の高いジャンプを身につけることはますます重要になっていくことでしょう。ジャンプがフィギュアスケートの醍醐味であり、最大の見せ場なのですから」
ネイサンだけでなく、宇野も世界の頂に向けて名乗りを上げた男子フィギュア戦国時代。最後に笑うのはいったい――。