世界選手権の公式練習で観客の視線を集める羽生(写真:アフロ) 画像を見る

「トロントで外食はしません。仙台でも外食はしないですね。外に出たくないんです……」

 

羽生結弦(24)の発言が、ファンのどよめきを呼んでいる――。6月12日、埼玉県内でトークショーを行った羽生。松岡修造(51)もインタビュアーとして登壇し、羽生の “弱音”が明かされたのだ。

 

羽生といえば、これまでつねに強気でポジティブな発言を続けていた。ところが昨シーズンは苦難の連続。18年11月に行われたロシア杯では公式練習中に転倒し、右足を負傷。そして今年3月の世界選手権ではネイサン・チェン(20)に優勝を譲り、「負けは死も同然」と重い一言を残していた。

 

そんな羽生は今回のトークショーでも、絶対王者の“限界苦悩”をうかがわせていた。トーク中、羽生は冒頭の「外に出たくない」理由として次のように語っている。

 

「無駄なエネルギーを使いたくないんです。外にいると『羽生結弦』でいなきゃいけないから。ご飯も、テレビ見ながら足を伸ばして食べるのがいい。外食は嫌いです。ツラいですね……」

 

外出するとどうしても人前で“絶対王者・羽生結弦”を意識せざるをえず、気が休まらない。食事時くらいは素の自分で過ごしたい……。羽生の言葉には、これまで見せなかった“普通の24歳”の苦しみがあふれていた。

 

さらに羽生は、どんなときでも限界まで頑張ってしまう自分についてもこう続けた。

 

「自分はほかの人よりもエネルギーを出し過ぎるみたいで……。人が80%でやるところを、自分はおそらく150%ぐらい出していると思います。だからみんなの流れでやっていると、僕1人だけ疲れてしまうんです……」

 

トークショーと同時期に出演していたアイスショー「ファンタジー・オン・アイス」でも、羽生は全力投球で臨んだ。しかし、大きな負担がかかっていたという。

 

「今度のファンタジー・オン・アイスも全力でやっています。(練習以外は)寝てますね。(エネルギーを出し過ぎて)ご飯も食べられなくなる。胃がやられちゃうんです。観ている方の期待に応えたいし、自分の期待にも応えたい……。羽生結弦はこうでなきゃいけない、という使命感があるんです」

 

長年、彼をそばで見てきたスポーツライターの野口美惠さんは、今回、本人が明かした心境についてこう話した。

 

「羽生くんは、勝利のためにすべてのエネルギーを費やしている選手です。普段の練習でも、まるで練習とは思えないような集中力で臨んでいます。途中でお友達としゃべったり、愚痴をこぼしたりすることはありません。集中して最も効率の良い、内容の充実した練習をしているのです。だからこそ、練習が終わったときは、他の選手よりもずっと疲れている気がします。そのモチベーションの高さは、いつも本当に感心させられるほどです。オーサーコーチも『ユヅルは持ち得るすべてのエネルギーを練習に注ぎ込み、使い切っている』と話していました。つまりそれだけ、手を抜いて練習することはないということです」

 

これまで周囲の期待に応えようとして、極限まで自分を追い込んできた羽生。だが彼にとっての大事な“支え”もまた、他ならぬファンのようだ。野口さんは、羽生の挫けぬ強さの源についてこう語る。

 

「羽生くんはファンのため、家族のために現役時代のすべての人生を捧げていると私は思います。もしかしたら彼がゆっくり休んで自分の時間を過ごせるのは引退後なのかもしれません。けれど彼にとっては、ファンの笑顔が次の試合へのパワーになっているんです。だからいまは彼の演技で感動することそのものが、彼への恩返しになるのかなと思います」

 

羽生自身も、今回のトークショーで駆け付けたファンに温かいメッセージを残している。

 

「ファンの方々にも迷惑をかけっぱなしですが、僕はいつもファンの皆さんに力をもらっています。皆さんが僕のことを守ってくれていると感じるんです。だから僕も頑張ります」

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