平昌五輪でSEIMEIを披露した羽生(写真:アフロ) 画像を見る

「ネイサン選手や宇野選手といったライバルも出場しないなか、羽生選手は四大陸選手権への出場を決めました。勝利へのこだわりもあったと思いますが、“今の自分を試したい”という気持ちが強いように感じます」(フィギュア関係者)

 

2月6日から韓国・ソウルで開催されたフィギュアスケートの四大陸選手権に出場した羽生結弦(25)。ショートプログラムでは歴代最高得点の111.82点を更新し、見事初優勝を果たした。しかし、昨年12月のグランプリファイナルではネイサン・チェン(20)に完敗。優勝は確実と見られていた全日本選手権でも、宇野昌磨(22)に初の敗北を喫することに。2度も苦汁を味わった羽生は、“異例の決断”をくだしていた。

 

「大会直前の2月1日に、羽生選手が昨シーズンから取り組んでいた『秋によせて』と『Origin』から、平昌五輪でも演じた『バラード第1番』と『SEIMEI』にプログラムを戻すと発表したんです。一度決めたことは曲げない性格の羽生選手だけに、驚きました」(スポーツ紙記者)

 

フィギュアスケート評論家の佐野稔さんは、シーズン中のプログラム変更についてこう解説する。

 

「一般的には滅多にありません。他の選手では過去に“途中までやってきたけれど上手くいかない”などの理由でありましたが、羽生選手としては初めてのことです」

 

思わぬ変心を見せた羽生。その裏で、“理想と現実のギャップ”が。

 

「昨年10月、羽生選手はネイサン選手の完璧な演技を意識するあまり『幻想を追いかけていた』と語っていました。そこで、加点を得やすいジャンプや表現を意識しながら滑ることで、GPシリーズ・カナダ杯では322点と高得点を記録。その演技を完璧にできればネイサン選手にも勝てると思っていたことでしょう」(スポーツライター・折山淑美さん)

 

しかし、GPファイナルでは40点の大差でネイサンに敗北。宇野にも敗れ、自信を喪失していた。2月3日放送の『S-PARK』(フジテレビ系)で、羽生は素直な気持ちを明かしていた。

 

「本当に悔しくて、情けなくて。自分が。ここまでボロボロになったのはノービス以来だなって思うくらいボロボロで。久しぶりにスケート立つの怖いなって。みなさんの前で演技するのも怖いなって思いました」

 

かつての“絶対王者”が吐露した悲痛な叫び。羽生は自ら打ち出した目標に追い詰められていた。

 

「五輪連覇後、羽生選手は『(競技者として)終盤に差しかかった気持ちはある』と語るなど、現役引退を見据えた発言をするようになりました。そんな羽生選手を突き動かしていた最大の原動力が、前人未到のクワッドアクセル(4回転半)を着氷させることでした。しかし、練習でもいまだ成功したことはありません。GPファイナルでは『絶望的な状況の中で何かを残さなきゃいけないという使命感がすごくあった』と語っていて、4回転半に固執している様子でした」(前出・フィギュア関係者)

 

さらに、変更前のプログラムも羽生の重荷となっていた。

 

「変更前のプログラムは、羽生選手のスケート人生に大きな影響を与えたジョニー・ウィアーさん(35)とエフゲニー・プルシェンコさん(37)がかつて使用していた曲目。思い入れの強い曲だけに、“スケート人生の集大成にしたい”と考えていたことでしょう。しかし連敗したことで、だんだんプレッシャーになっていたようです」(前出・フィギュア関係者)

 

四大陸選手権直前、羽生は抱え始めるようになった苦悩についてこう語っていた。

 

「プルシェンコさんたちの背中をずっと追いかけてる少年のままでいたような感じがしたんです。あまりにも理想が高いがゆえに、自分の演技として完成できないなと思ってしまいました」

 

苦悩を乗り越えた末に辿り着いた“スーパースラム”。1カ月後の世界選手権でも、大きく羽ばたくことだろう――。

 

「女性自身」2020年2月25日号 掲載

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