在学中は、オフの日にまとめて授業をオンデマンド受講し、遠征の移動の飛行機の中でレポートを書く日々が続いていたという。そして、’16年ごろから西村教授のゼミへ所属。
「カナダにいる羽生さんとは時差の関係もあり、基本的に毎週月曜日に、研究の進捗報告を彼にメールしてもらい、私がフィードバックを返信するというかたちを繰り返して、授業を進めていきました。ほとんど個別指導でしたね」
羽生はどんな内容の研究に取り組んでいたのだろうか。卒業論文は、「フィギュアスケートにおけるモーションキャプチャ技術の活用と将来展望」というものだが……。
「モーションキャプチャといって、体中や指先に30本くらいのセンサーをつけ、動きを3Dで記録したり分析する技術があるんです」
羽生は研究のために、自らの体にセンサーをつけてジャンプを跳び、デジタルデータ化したという。
「これはなかなか1人で設定するのは大変で。でも、『仙台まで行って手伝おうか?』と私が言っても、『いやいや、なんとか自分でやります』と。彼はすぐに機械の使い方を理解して、使いこなせるようになっていましたね。私だったら、“そんなにセンサーをつけて1人でデータをとるなんて嫌だな”と思うのですが、彼はしっかり1人でやっていたから、すごい人だなぁと思いました。
やっぱり自分が納得しないと気が済まないみたいで、抑えめの課題を出しても私が言った3倍はやるんです。だから、羽生さんに『そんなにやらなくていいよ。もっとゆるく、ゆるく』と言うのが私の仕事になっていましたね。
彼の卒論も文字数にして3万字ほど。平均的な学生の倍はあります。完璧を目指している人なので、本当は10万字くらいは書きたかったんじゃないかと思いますね」
常に努力を惜しまない、実に羽生らしいエピソード。選手としてだけでなく、研究者としての姿勢も“超一流”レベルといえそうだ。
「女性自身」2020年12月1日・8日合併号 掲載