「何か、嫌われることしたかなって。すごい氷に嫌われちゃったなと思いながらやっています」
オリンピック3連覇を目指すフィギュアスケート日本代表の羽生結弦(27)。2月8日に行われた北京オリンピック・フィギュアスケート男子ショートプログラムの演技後、冒頭のコメントを残した。
各メディアによると羽生は、別の演技者がリンクに残した穴に引っかかり、プログラム冒頭の4回転サルコーが1回転に。残りの演技は全て高い完成度で仕上げたが、得点は95.15点。8位発進となった。
“絶対的王者”を襲ったまさかのアクシデント。演技後、羽生はキスアンドクライで自身の得点を確認すると、カメラに向かって頭を下げた。
その後の羽生の様子を、日刊スポーツの阿部健吾記者がTwitterで伝えた。
《#羽生結弦 選手 得点が出た後もしばしキスクラに残り、次滑走の #宇野昌磨 選手を応援する拍手をしてから、裏へ戻りました》
不運に見舞われた直後にもかかわらず、後輩・宇野昌磨(24)へのリスペクトを忘れない羽生。どんな状況でも気遣いを忘れない、王者の風格を感じさせた。
自身のアクシデントの直後でも後輩に寄り添ったこの姿勢について、あるスポーツ紙記者は次のように話す。
「昨年7月の東京オリンピックで、体操の種目別鉄棒に臨んだ内村航平さん(32)を彷彿とさせます。“体操界のキング”として鉄棒の金メダル最有力選手と期待されていた内村さんですが、予選のひねり技で落下。演技終了後の内村さんは、一度は会場を去りましたがすぐに戻り、日本チームの後輩たちにアドバイスやエールを送りました。衝撃的な結果に終わった内村さんでしたが、サポートに徹する姿はファンから称賛されていました」
1月の引退会見では、「高い人間性を持つアスリートこそが本物」と語っていた内村。
さらに、「大谷翔平くんもそうですし、羽生結弦くんも、人間としての考え方が素晴らしいからこそ、国民の方々から支持される」とも話していた。
夏・冬それぞれの王者に共通する後輩へのまなざし。これこそがまさしく、内村の語る“高い人間性”なのかもしれない。