「本当に滑りやすくとても気持ちのいいリンクでした。ありがとうございました」
決戦から4日後の14日に記者会見に出席した羽生結弦(27)は、そう感謝の言葉を述べた。
北京五輪の男子フィギュア。羽生の3連覇はかなわず、4位という結果に終わった。羽生本人が競技直後に「努力って報われない」とこぼすほどの、まさかの展開。
「羽生結弦という人には普通の選手には起こらないことが起こる。“てっぺん”でも“どん底”でも両方で……」
そう評するのは、フィギュアスケート評論家の佐野稔さん。
「ショートプログラム(SP)では氷の穴にハマるというアクシデントでしたが、普通はあんなところにハマりません。完全に運が悪かった。そこでぼうぜんとせず、持ち直してその後を完璧に滑り切ったのはすごいことです」(佐野さん)
一方で、フリーについては、
「SPがどん底とすれば、フリーはてっぺんといえるでしょう。4回転アクセル(4A)は完成とはいきませんでしたが、ISU(国際スケート連盟)に4Aだと認定されたのは偉業です。“初めて4Aを跳んだのは羽生結弦”と歴史に残るわけですから」(佐野さん)
幼少期の羽生を指導したコーチ・山田真実さんも称賛する。
「4回転アクセルがすごすぎて、もうひとつのジャンプの失敗が気にならないくらいでした。結弦にしかできないことです。金メダル以上の価値があると私は思います」
競技人生の最終目標と掲げていたジャンプが、転倒し、回転不足ではありながらも、“4回転アクセルだ”と認められた。
競技を終えた後、「もうちょっとだったなと思う気持ちもあるんですけれど、あれが僕のすべてかなって」「今できる羽生結弦のアクセルの全部があれかな」と語った羽生は、“4回転アクセルへの挑戦は続くのか”を問われて――。
「ハハハ、もう少し時間をください。ちょっと考えたいです。それくらい今回はやり切っています」