■取り沙汰された現役引退の可能性
この競技後の話しぶりに、“引退”という言葉を想起した視聴者は多かったようだ。《このまま引退しちゃいそう》などのコメントがSNSに多く投稿された。
そんななか14日の会見で、改めて4回転アクセルへの今後の挑戦について聞かれた羽生は、
「どうなんでしょうね。まだ、自分の中でまとまってはないです」
と答えている。また、次回の五輪についても聞かれると、
「この五輪が最後かと聞かれたらちょっと分からないです」
「(五輪で)また滑ってみたいなという気持ちはもちろんあります」
と、笑顔を見せていた。
ジュニア時代から長年応援してきた女性にファンの思いを聞くと、
「“ケガが心配だから無理して現役を続けないでほしい”というファンもいれば“まだ活躍を見ていたい”というファンもいます。私自身としては、羽生くんが思うように生きてほしいと願っています」
ただ、「そもそもファンの多くは4年前の平昌五輪の後に引退すると思っていました」とも。
「平昌後、北京五輪にはあまり気持ちが向いていないようでしたから。4回転アクセルが考えていた以上に難しいものだったこと、コロナ禍で試合が減ったことなど想定外が続いて、結果的にここまで現役を続けているのだと思います」
’14年のソチ五輪より前から10年近く世界のトップで競技を続けている羽生だが、「驚異的なことだ」とフィギュア関係者は言う。
今回銅メダルをつかんだ宇野昌磨(24)も会見でこう話している。
「技術的にレベルが上がっているなかで、フィギュアを続ける年齢が短くなる。時代が変わってもトップに居続けるゆづくんはすごい」
それは、途轍もない努力の裏打ちがあってこそ。そして現役を続けるということは、今後もその努力を続けていくということだ。
前出の佐野さんは、「4A完成まではやめないでしょう」とみる。
「(競技直後の)『やり切った』という発言は、4分間のフリーをやり切ったということでしょう。“スケート人生をやり切った”とは言っていません。先はまだ考えられないと思いますが、“4Aを完成して終わりたい”とは思うのではないでしょうか。
北京のフリーでの4Aは、いままでで一番の出来です。これまでほとんど両足で降りていたのが、“右足だけで着氷するんだ!”というトライをしていた。後は、降りる姿勢を作るだけなんです。完成まであと一歩だと思います。ただISU公認試合で成功しないと認定されません。直近に控えるのは世界選手権です」(佐野さん)
南フランスのモンペリエで3月23日に開幕する世界選手権の日本代表に、羽生は選ばれている。