五輪の興奮冷めやらぬ2月21日の夜、北京から帰国した羽生結弦(27)。成田空港のロビーを通る際には出迎えたファンらと目を合わせるようにしながら、「ありがとうございました」「お疲れさまでした」と丁寧に会釈をしていたーー。
この帰国と同日のこと。羽生の故郷・仙台の市議会の一般質問では、1人のベテラン市議が弁舌をふるっていた。
「羽生選手の思いをかなえて差し上げたい」
そう言って訴えていたのは……。当人である仙台市議会の佐藤正昭議員が本誌の取材に応じてくれた。
「仙台に“アイスアリーナを建設する必要がある”と考えています。ちょうど五輪が閉会した翌日に議会があって、この件についていいタイミングで質問ができました」
そう話す佐藤議員は市議として、スポーツの力で仙台市を活性化することに尽力してきた人物。アイスアリーナ建設が必要だと考えるのには、市議会で言及した“羽生の思い”が関わっている。
「羽生さんはかねてから『仙台を拠点に生活していきたい』『将来は指導者として後進の指導に当たりたい』と話しています。その願いどおり、いずれは故郷でプロスケーターの道や、指導者の道を歩んでいただきたい。ところが仙台でスケートをしたくても、リンクの設備が十分に整っていない現状があります」
仙台にある通年のリンクは現在、アイスリンク仙台のみ。羽生がスケートを始めた場所であり、拠点であったカナダに渡れなかったコロナ禍のこの2年間に練習を続けていたホームリンクである。
ただそのアイスリンク仙台はフィギュアスケートの試合で使う規格よりサイズが小さいといい、
「十分な広さがないので、羽生さんも練習がやりにくい部分があったかと思います」(佐藤議員)
実際に羽生自身が仙台のリンクの状況について、過去に次のように話していたこともあるのだ。
「本気で世界のトップを目指せる施設の環境が(仙台に)整っていなかった。だからカナダに行った」「(仙台の)施設が整わなければいけないという現実も感じた」