「大きな揺れのために、照明が落下したり、壁がはがれ落ちたりしたようです」
地元のスケート関係者がそう話すのは、羽生結弦(27)のホームであるアイスリンク仙台の現況だ。
3月16日夜、宮城県と福島県で最大震度6強を観測した地震。羽生の故郷である仙台市も、大きな被害を受けた。
「羽生選手は北京五輪後、仙台へ戻っています。一部週刊誌が3月上旬にアイスリンク仙台に出入りする羽生選手の姿を報じており、すでに練習を再開しているようなのですが……」(スポーツ記者)
そんななかの地震ーー。アイスリンク仙台は一時営業中止に。6日後に営業再開した。
「損壊した部分を封鎖して、近づけないようにして営業しています」(前出・地元スケート関係者)
深刻なニュースの一方で、心を和ますような温かいニュースも聞こえてきた。羽生と、1本の桜の木にまつわるものだ。
「つぼみがたくさんついているので、今年は間違いなく咲くでしょう」
ほがらかに話してくれたのは、仙台市の七北田公園都市緑化ホールの館長、相澤経利さんだ。七北田公園から20分ほど歩くと、羽生が通った七北田小学校と、七北田中学校。この付近は、まさに少年・羽生が育ったエリアだ。
この公園に、羽生ファンから“ゆづ桜”と呼ばれている桜がある。五輪連覇を称えて、平昌五輪後の’18年6月に植樹されたもので、各地からこの桜を見に訪れるファンも少なくないという。
ただこの“ゆづ桜”、一時は伐採の危機に瀕していた。
「植えられていた場所の日当たりの問題などがあって、生育状態が悪くなってしまったのです。ふつうの桜のように“満開”という感じの咲き方をしませんでした。特に一昨年はひどくて、一枝に4〜5輪がちょぼちょぼと咲く程度。環境のいい場所に移植しようにも、木が弱りすぎていて、動かすとかえって枯れてしまうかもしれないほどで……。
記念樹の場合によくあることらしいのですが、伐採して新しい苗木に交代するという案も出ました。でも、樹木医の先生と相談して“やっぱり蘇ってほしい”ともう少し様子を見ることになりました」
その後、剪定などの措置によって、この2年でなんとか息を吹き返し始め、先日3月18日になって、ようやく公園内の別の場所に移植をすることができた。
「危機を乗り越えて、いまがあるんです。羽生くんと同じですね」
相澤さんはそう言って笑う。