「会場外でも、出店が出ていたり、郷土の伝統芸能の江刺鹿踊の披露があったり。3日間、お祭りのような雰囲気でした」(地元関係者)
アイスショー『スターズ・オン・アイス』の岩手公演が、奥州市で4月3日から5日まで行われた。
「1日4千人から5千人のお客さまが3日間、奥州市に来るというのはめったにないことです」と市の協働まちづくり部の担当者も語る盛り上がりは、ショーの出演スケーターに羽生結弦(28)が名を連ねていたためだろう。
ただ、今回は単に“羽生が来た”という以上の意味があった。岩手県奥州市が、あの大谷翔平選手(28)の地元だからだ。
「ショーの出演者たちも大谷選手の地元だということを意識していて、屋外で野球をしてウオーミングアップをするスケーターもいたほどです」(スポーツ紙記者)
会場に近く、館内に大谷ゆかりの展示コーナーもある奥州市伝統産業会館の担当者はこう語る。
「ショーの期間、入場無料にしたところ、3日間で300人ほど来館されました。大谷選手の握手像もあるので『羽生くんを見に来たら、大谷選手と握手できた!』と喜ばれる方もいらっしゃいましたよ」
いまや国民的スターの羽生と大谷は、’94年生まれの同い年。
最近では、ともにコーセーのスキンケアブランド「雪肌精」の広告ビジュアルを務めていることも話題に。同社の担当者によると、
「雪肌精でも、羽生選手と大谷選手は違う商品に起用させていただいています。年齢や性別、国籍を問わず雪肌精を使っていただきたいという思いがあり、お2人が国際的に多くの方に愛されているというのが起用の大きな理由です」
2人は、これまでも多くの共通点があるといわれてきた。
「’94年生まれのゆとり世代。2人とも“お姉ちゃん子”ですし、ぬいぐるみ好き。羽生さんの“プーさん”は有名ですが、大谷選手も高校時代、犬のぬいぐるみを寮の枕元に置いて寝ていたそうです。そして、共に高校1年生のとき、東日本大震災を経験しています。大人になってからも、お酒をほとんど飲まず、仲間との外食もめったにしないストイックさもよく似ています」(スポーツライター)
2人の初対面は7年前。’16年1月に開催された「ビッグスポーツ賞」の表彰式だった。壇上で羽生と向かい合った大谷は、恐縮した面持ちで「初めまして」と挨拶。同い年ということに大谷は「僕は“羽生くん世代”」と、憧れの眼差しを向けていた。
「当時、羽生さんはすでにソチ五輪の金メダリスト。かたや大谷選手は日本ハムで“二刀流”として話題になっていたものの、世界的な活躍という点で羽生さんが格上でした」(前出・スポーツ紙記者)
その後、羽生は’18年2月の平昌で五輪連覇を達成。一方で、同時期に大谷も世界に舞台を移す。
「大谷選手は’18年からメジャーリーグへ。故障や手術を経ながらも投打で大活躍し、’21年には満票でMVPを獲得。全米を夢中にさせる選手となり、日本でも国民的スターとして扱われるようになりました」(前出・スポーツ紙記者)
初対面以降、2人は一度も会っておらず、連絡先も知らないという。ただ、互いについて報道陣から意見を求められることはたびたび。羽生にとって大谷は意識せざるをえない相手になっていた。
昨年8月、本塁打数と投手としての勝利数がダブルで2桁達成という大谷の快挙について聞かれた羽生は「“大谷世代”と呼ばれるような世代にいられて本当に光栄」と称賛の言葉を述べている。
「羽生さんは、教員だったお父さんが野球部の顧問だったということもあり、自分も野球選手になりたいと思っていたほどの野球好き。最近も“人目を気にしなくていいならバッティングセンターに行きたい”と話していたほどです。先日のWBCで大谷選手は世界制覇を果たしましたが、その活躍もやはりチェックしているでしょう」(前出・スポーツライター) 今回のアイスショーで訪れた奥州市では、至るところに“地元のヒーロー・大谷”を感じさせるものがあふれていたようだ。
「会場の外で市もPRブースを出したのですが、職員が大谷選手の背番号17のTシャツを着てお茶を振る舞いました。新幹線の駅にも大谷選手の握手像があります。ショー会場の体育館には、大谷選手から寄贈されたバットやユニホームが展示されています。羽生さんはお客さんが入る前に会場をぐるっと回って見たそうですから、その展示コーナーもご覧になったのではないでしょうか」(前出・奥州市協働まちづくり部担当者)
前出のスポーツライターは言う。
「地元を訪れて、羽生さんは大谷選手の存在感の大きさを改めて実感したのではないでしょうか。実は、今回の『スターズ・オン・アイス』のパンフレットの中で、羽生さんは“あなたにとってのスターは誰か?”という質問に大谷さんの名前を挙げて、“同世代の星”と答えているんです。最高の賛辞であり、負けず嫌いの羽生さんが“生涯のライバルと意識している”という宣言にも感じられます」(前出・スポーツライター)
羽生は約1年前、大谷について、「フィギュアスケートは23〜24歳くらいが全盛期と思われている。同年代の選手が、前人未到のことを切り開いてやっているところを見ると、本当に勇気づけられる」と話していたこともある。
「“世界一”の頂に立ったアスリートとして今後の人生をどう生きていくか、羽生さんは常に考えています。同じ立場にいる大谷選手の動向が発奮材料になっているのでしょう。羽生さんはプロ転向してからも東京ドーム単独公演など誰にもまねできない挑戦を続けていますが、今後も大谷選手に負けじと新たな挑戦を見せ続けてくれるのではないでしょうか」(前出・スポーツライター)
奥州市の公演でも圧巻の演技を見せたという羽生。3日間の公演日程を終えた翌6日(日本時間)には、大谷がアメリカで投手として今季初勝利を挙げている。
その活躍に刺激を受けて、さらに上を目指す羽生が見られそうだ。