(写真・神奈川新聞社)
横浜の水辺が、全国の都市部でもまれなマリンスポーツの人気スポットとなっている。物流機能が移転した横浜港の内港地区や河川ではカヤックやカヌー、長いボードに立ってこぐ「SUP」などが盛んで、パドル愛好家の活動水域は年を追うごとに広がっている。
横浜・みなとみらい21(MM21)地区に隣接し、新市庁舎など大規模な開発が計画されている横浜北仲地区。すぐ近くを流れる大岡川の河口に16日、6人が同時に乗れる巨大SUPが出現し、観光客を驚かせた。
水辺に親しむ活動を行う市民団体「水辺荘」(横浜市中区)が、市民に水辺の魅力を知ってもらおうと「横浜北仲マルシェ」に合わせて体験会を催した。初めて乗った女性は「空が高くて気持ちいい」と声を上げた。
メンバーの多くは企業や役所勤めの男女。週に数回、出社前の「朝SUP」が新たな習慣になっている。中区の「川の駅大岡川桜桟橋」からMM21地区まで大岡川を往復約5キロ、ゆっくりとこぐ。代表の山崎博史さんは「水辺を楽しむことで都市の新たな魅力を生み出したい」と話す。
大岡川桜桟橋はパドル愛好家たちの拠点となっている。「横浜SUP倶楽部」(同区)もその一つ。3月には「横濱SUPマラソン」を催すなどスポーツとして位置付けており、メンバーたちは3年前から朝練にいそしんでいる。
横浜中心部の川は運河として造成され利用されてきた歴史があり、大岡川と中村川、堀川は上流でつながっている。いずれも横浜港に注いでおり、パドルで進むカヤックやSUPなどは原則、自由に往来できる。
堀川の河口に当たる中区新山下に6月、パドル愛好家の新たな拠点「モンベル横浜しんやました店」がオープンした。カヤックやSUPなどでも立ち寄れる「よこはま・しんやました海の駅」に隣接し、店舗前の穏やかな水域ではカヤックやカヌーの体験会を開く。都内からも愛好家が訪れるようになり、さらににぎわいが増している。
「大岡川と新山下とともに、日本丸メモリアルパークもパドル愛好家の拠点になれば」と期待するのが、MM21地区でシーカヤック体験教室を2010年から開いてきた帆船日本丸記念財団(西区)。NPO法人「横浜シーフレンズ」(中区)が協力し、初心者でもミニツーリングが楽しめる内容で定評がある。5月からカヌーポロ教室を新設したところ、参加者が予想を上回る人気ぶりだったという。
横浜港は波が穏やかで、活動水域へのアクセス性が良いことがパドル愛好家たちが横浜に集う理由だ。
一方、水難事故を防ぐために、地域独自のルールの徹底が急務となっている。町内会や商店会、市民団体などでつくる「大岡川川の駅運営委員会」は15年7月、自主ルール「大岡川安全航行ガイド」をまとめた。「水域を利用する人たちは互いに譲り合い、安全で楽しく利用するために常に努力しないといけない」と求めている