(写真・神奈川新聞社)
スポーツに年齢は関係ない。95歳のスイマー、石井菊江さん(イトマンスイミングスクール横須賀)=横須賀市=の泳ぎはそう伝えている。5月の日本マスターズ水泳短水路大会で日本新記録を樹立。週7日トレーニングを欠かさないアスリートは「水泳のおかげで、この年まで生きられた。まだタイムを縮めたい」と生涯現役を貫く。
クロールを泳ぎ切り、呼吸を整えるのもそこそこに背泳ぎへと移る。なぜそこまで泳げるのか。その問いに対する答えは明快だ。「スタートしてゴールにタッチするでしょ。そのときに達成感が体中を走る。楽しいから続けられる」
始めたのは還暦を迎えた35年前。心臓を悪くし、原因不明のめまいや肩こりに悩まされていたところ、自宅近くで同スクールがオープンした。
「娘に勧められて早速入会したら、半年で体重が70キロから55キロになった。それからはめまいもなきゃ肩こりもない。鼻水が少し出ても泳げば治っちゃう。水泳ってありがたいね」
目的が健康づくりだけでなくなったのはそれから5年後だ。初めて出場した大会で大会新記録をマーク。「それからやみつき。出るたびにメダルをもらえるのが面白くて」
2013年には日本マスターズ選手権の混合200メートルリレーで世界新記録を樹立。ことし5月の日本マスターズ水泳短水路大会では25メートル背泳ぎと同自由形の95-99歳の部で日本新記録を出した。「日本記録はこの前ので七つ目」。そう言って誇らしげに笑う。
リオデジャネイロ五輪では泳ぎを参考にしているという入江陵介選手(イトマン東進)に胸を熱くした。「自分が泳いでいる気になっちゃった」。100分の1秒でも早くゴールへ。その思いはひ孫ほど年の離れた選手と変わらない。
「100歳までは泳ぎたいと思うけど、大会は95歳までかな。それまでに記録を更新したい。35秒で泳げばいいからね。よし、やってみよう」