(写真・神奈川新聞社)
東京電力福島第1原発事故で、横浜市に自主避難した男子生徒(13)がいじめを受けていた問題で、生徒側の相談を受けた県警から同級生との金銭トラブルについて「1回約10万円のやりとりが複数回あった」などと情報提供があったのに、学校や市教育委員会が対応していなかったことが17日、生徒側の代理人弁護士などへの取材で分かった。
いじめ防止対策推進法は、いじめにより心身や財産に重大な被害が生じた疑いがある場合などを「重大事態」と定義している。
市教委の第三者委員会がまとめた報告書や弁護士などによると、当時生徒が在籍していた市立小学校側が金品を巡るトラブルを把握したのは、5年生だった2014年5月。金品を受け取っていた側の保護者が情報提供した。それを受けて学校は、複数の同級生らのみから聞き取り調査を行い、被害生徒には聞き取っていなかった。
自宅に保管していた生活費がなくなっているのに気付いた被害生徒の保護者も6月に「同級生から金銭を要求された」などと学校に相談。額は150万円と説明した。しかし、学校は「(被害生徒が)積極的に現金を渡した。総額は数万円」と結論付け、生徒の保護者に「警察に被害届を出して相談したらどうか」などと話したという。
生徒の保護者は夏ごろに県警に相談。県警の調べで事件化は見送られたが、10~11月、保護者と学校側に「1回10万円程度を複数回使った」と聴取内容などについて連絡があったという。生徒の保護者も学校と市教委に報告していた。
だが学校はその後も重大事態と捉えず、再調査も行っていなかった。結果、保護者から市教委へ調査の申し入れがあった翌15年12月なってようやく重大事態と認識するに至った。
金銭トラブルについて、第三者委は報告書で「小学生が万単位の金銭を『おごる・おごられる』という状況を起こしていることが教育上問題」としている。
市教委は「(数万円のやりとりを把握した)14年6月の時点で重大事態とするべきだった。いじめという認識が学校になかった。重大事態の報告がなぜ遅れたのか、しっかり検証したい」としている。