(写真・神奈川新聞社)
小田原市の生活保護行政のあり方を考えるシンポジウムが30日、市民会館(同市本町)で開かれた。市で発覚した不適切な表現をプリントしたジャンパー問題を議論した検討会で座長を務めた井手英策・慶大教授が問題点などを説明。パネルディスカッションでは、支援者が生活保護利用者一人一人と向き合い、その言葉に耳を傾けることの大切さが指摘された。
井手教授は、ジャンパー作成の契機になった傷害事件について「行政側の、利用者への理解や制度に対する知識の不足が背景にあった」と解説。一方で、生活保護を担当する生活支援課が過酷な就労環境に置かれ、庁内で職員に配属されたくない部署と思われていたことから「組織内部の団結を強めるために、(ジャンパーを)作成した」と説明した。
市の生活保護行政の問題点として、配慮に欠けた記述が散見されたしおりや保護決定までに要する期間の長期化、利用者に占める母子世帯の割合の低さ、同課の女性職員の少なさ-など7点を列挙。「まず市は、職員が異動したい、女性が働いても大丈夫という職場に変える努力をする必要がある」と指摘した。
パネルディスカッションでは、利用者と支援者との間にある壁を越えるために必要なことをテーマに議論した。東京都大田区で生活保護面接員を務める渡辺潤さんは「ケースワーカーのひと言は重く、その人の人生が決まってしまう」という利用者の言葉を紹介した上で、「一人の市民に対し、愛情を、温かい心を持って接することから始めてほしい」と訴えた。
シンポは、検討会から議論や改善策の内容を市民とも共有する場を設けるよう求められ、市が企画。市民や市職員ら計約350人が参加した。
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