(写真・神奈川新聞)
県は12日、全国瞬時警報システム(Jアラート)の発動を想定して県内全市町村が一斉にサイレン音を鳴らす訓練を実施すると発表した。北朝鮮情勢を踏まえた独自の対応で、県内全域での同時訓練は初めて。
訓練は来年1月31日午前11時に実施。各市町村の防災行政無線の屋外スピーカーで、「このサイレン音は弾道ミサイルが日本に落下する可能性がある場合や、日本の上空を通過する場合などに流れます」といった説明を伝えた上で、14秒間サイレンを鳴らす。ただ横浜、川崎両市は「混乱が生じかねない」などとして屋外放送はせず、各市役所と区役所内で再生する。
県は訓練の意義について「いつミサイルが発射されてもおかしくない。事前にサイレン音を知り、冷静に対応できるようにしてほしい」と説明。今月13日に問い合わせ窓口を開設するほか、各自治体の広報紙で周知するとともに警察や消防、自治会、交通機関などに説明し理解を求めるとしている。
弾道ミサイルを想定した訓練を巡ってはその有効性や影響を問題視する声が上がっている。安全保障や日米地位協定に詳しいジャーナリストの布施祐仁氏は「具体的な被害想定を住民に説明せずに訓練を実施するのは無責任」と断じる。
北朝鮮は既に核弾頭を保有している可能性があり、日本を射程とするミサイルも数百発を配備しているとされる。布施氏は「自治体には住民の生命、財産を守る義務がある。国に対し具体的被害想定を示すよう求めるのが先だ」と指摘する。
政府は4月、全国の自治体に弾道ミサイルを想定した避難訓練を実施するよう通知。全国で既に約40カ所で行われ、県内では8月19日の平塚市を皮切りに横浜、相模原市、愛川町の計4カ所で実施している。
その及ぼす影響について政治学者の中野晃一上智大教授は具体的効果が薄いことに加え「むしろ北朝鮮を悪魔化する悪影響もある。偏見を植え付けたり恐怖心をあおる恐れもある」と問題視している。
戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏も「非常時の精神を国民に植え付ける悪影響がある」と指摘している。