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トラックの天井がお気に入りのセコムと飼い主の西原良宏さん=6月、多良間村

 

【多良間】大手警備会社にあやかって命名された多良間村の雑種犬「セコム」(雄、4歳)が、逃走した牛を追い掛けたり、サトウキビ畑でネズミを捕獲したりと縦横無尽の活躍を見せている。指定席は、畜産業を営む飼い主の西原良宏さん(38)が運転する2トントラックの天井だ。トラックの上から島を見守り、心地良い風とともに人々の注目を集めている。

 

セコムの得意技は逃げた子牛を追うこと。西原さんが牛追いをする姿を見て学んだ。今は指示をしなくても逃げた牛を猛然と追って牛舎へ誘導する。他の畜産業者の牛が逃げた際も、助っ人をお願いされるほど頼りにされている。

 

トラックにサトウキビを積み降ろしをする最中に、ネズミを捕まえてくることでも重宝されている。その際のご褒美は甘いサトウキビだ。西原さんは「自分がキビをかんでいると、セコムはいかにも『むけっ』という感じで好物のキビを差し出してくる。どっちが主人か分からないよ」と苦笑する。

 

セコムは3歳のころ暑さからか、トラックの天井に飛び乗り、運転中でも居座るようになった。急ブレーキやカーブを曲がる際も落ちることはない。

 

セコムをかわいがる西原さん

当初は宮古島署に注意されたり、住民から「危ない」「虐待」などの声が上がったりした。西原さんはやめさせようとしたが、セコムは天井に上り続けた。無理に助手席に乗せると、機嫌が悪くなるという。「もう好きにやってくれ」と西原さんの方がさじを投げてしまった。住民は「あれは自分が好きでやるから仕方がないさ」と理解を示す。

 

セコムはなぜ天井を好むのか。西原さんは「やはり風かな。扇風機でも風量を強くしたら気持ちいいさ。セコムも思い切って風を浴びたいのだろうね」と推測する。多良間村に信号は一つだけ。交通量が少なく車も低速で走る牧歌的な島だからこそ、“天井乗り”ができるのだろうか。

 

警備会社セコム琉球の担当者は「当社の名前を付けてくれてうれしい」と喜ぶ。同社は6月下旬に西原さんと面会し、グッズを進呈した。

 

西原さんは「防犯に役立ってほしいとの思いから命名したが、それ以上の働きをする。本当に賢い相棒だからもう注意はしない。セコムがいなかったら自分は何もできないよ」と笑顔で話した。取材中もセコムはトラックの天井に居座り、西原さんをじーっと見詰めていた。(梅田正覚)

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