専門高校の受験に挑戦した仲村伊織さん=6日
7日まで行われた沖縄県立高校の一般入試で、重度の知的障がいがある仲村伊織さん(15)=北中城村立北中城中学校3年=が専門高校受験に挑戦した。重度知的障がいがある中学生が特別支援学校以外の県立高校を受験するのは県内では初めて。周辺からは会話や読み書きが困難な伊織さんの受験に否定的な声もあった。しかし母親の美和さん(49)は「伊織には地域で育ってほしい。健常者と障がい者が共に学び育つことでインクルーシブな社会が実現するのではないか」と訴えている。
伊織さんが生まれたとき、医師に「3歳までは生きられない」と言われた。しかし、息子はすくすくと育ち、美和さんは息子の将来を考えるようになった。「自分たちの死後、どのように生きていけるだろう。伊織には地域で育ってほしい」。地域の学校に通わせることを決めた。
伊織さんにとって地元での学校生活は楽しいものだった。休みの日でも登校しようとした。小学4年のとき、クラスで「伊織さんを運動会のリレーに出すか」という議論があった。勝ちにこだわるなら出さない方がいいという声もあった。だが、一人の児童の「伊織抜きで勝ってうれしいのか」の一言で、伊織さんの出場でクラスは一致した。クラスメートたちと楽しい思い出を積み重ねた伊織さんにとって、同級生と一緒に進学するという選択は自然なことだった。
16年7月に神奈川県相模原市で起きた障がい者殺傷事件を受け、ネット上には「殺したことは悪いことだけど、気持ちは分かる」という賛同の意見もあった。美和さんは「共に学び、育った伊織の同級生がこのようなことを言うとは思えない」と強調する。
伊織さんが受験した学校では農業が学べる。職場体験で農家を訪れた際、伊織さんは冷蔵庫にある野菜が地中から出てくることに興味を示した。美和さんは「今後、農業と福祉の連携が進んでいく。健常者の同級生と農業を学ぶことは伊織にとってもいい経験になるはずだ」と期待している。