米国では500万人を超える男性のうつ患者がいると言われている。ロサンゼルス大学で精神医学を研究するイアン・A・クック教授は「うつであると診断を下す基準となる症状に、性別は関係はありませんが、主訴は男性と女性で異なる場合があります」と指摘する。健康情報サイトHealth.comが、男性のうつ兆候を示す12の変化を挙げている。
1:疲労感を覚える
うつの傾向が見られる人は、身体的、精神的に疲れを覚える。アラバマ大学のジョシュ・クラポー博士によると、男性は女性に比べてうつの主訴として疲労を申し出る人が多いという。
2:寝過ぎる、またはほとんど眠れない
睡眠障害はうつと密接な関連性を持っている。「1日12時間寝ても疲労感が拭えなかったり、2時間ごとに目を覚ましたりする人はうつの可能性があります」(クック教授)。
3:腹痛、または背中が痛む
便秘や下痢といった腹痛や、背中の痛みも、うつ患者が訴える代表的な症状だ。しかし、男性の場合、こういった症状とうつを関連づけて考える人が少ないという。
4:短気になる
うつ患者は思考が否定的になる。常にあらゆる物事を否定的に捉えるために、イライラし、短気な性格になってしまう。
5:集中力が落ちる
否定的な思考で頭が埋め尽くされてしまうことで、他のことに気が回らなくなってしまう。結果的に集中力を欠き、仕事に支障を来す。「うつ状態は可逆的脳不全と言えます。うつになると、CPUがきちんと働かなくなるのです」(サスマン博士)
6:怒りや敵意に支配される
初期のうつ患者の中には、周囲の人に対し敵意や怒りをまき散らし、攻撃的になる男性がいる。これらの感情は短気とはまた異なり、より強い感情である傾向が強いとクラポー博士は指摘する。「何かが間違っている」と感じてそういった感情に囚われる男性に対しては、「あなたは強い」「あなたは有能だ」と保障する必要があるという。
7:ストレスを感じる
クラポー博士によると、ストレスとうつは相互的関係にあるという。「“ストレスを与えられている”と感じることは、臨床的うつ病(極度の抑うつ状態)と診断する指標であり、うつの原因の一つなのです。長期に渡ってストレスに晒されると、体と脳に変化を与えることが研究によってわかっています。この状態を経て、うつに至るのです」。
8:不安になる
不安障害とうつには密接な関係がある。一般的に、不安障害を起こす人には女性が多く、その数は男性の二倍と言われているが、男性が自らの感情を説明する際、「悲しい」よりは「不安だ」と話す方がハードルが低いのだとクック教授は言う。男性との話し合いでは、仕事に関する懸念や、職を失い、自身と家族を養う能力が奪われるのではないかという不安が議題に上がることが多いのだとか。
9:アルコール、薬物の濫用
アルコール依存症を患っている人は、飲酒問題を抱えていない人に比べて大うつ病性障害に罹る確率がおよそ二倍であるとの研究結果がある。「これは男女ともに起こりうることですが、不快な感情を隠すために薬やアルコールに走るケースは男性に多いのです」(クック教授)。
10:性的不能
うつは性欲の減退とEDを引き起こす。そしてこれは男性にとって「誰にも言いたくない」症状の一つだ。性機能不全はうつに起因するが、この症状がうつをより悪化させるという。
11:優柔不断
「銀行にお金はあるのに、電話を止められてしまいました。請求書を処理する気になれなくて(もしくは、いつ払えばいいのか決められなくて)」。このような話をする人々を数え切れないほど見てきたというクック教授。うつ病患者の中には、物事を決断することにとても苦労する人がいるという。「これは情報処理能力の問題です。うつは決定する能力を落ち込ませるのです」(クラポー博士)。
12:自殺願望を持つ
女性のほうが自殺傾向は強そうだが、実は自殺願望を持つ男性は女性の4倍にも上るという。男性はそれが最初であっても、銃を使って確実に自らを死に至らしめてしまうとか。特に自殺傾向が強いのは年配の男性だ。自殺した男性のおよそ七割は、引き金を引く1か月以内に主治医に相談した記録があるが、老化現象と誤診され、うつであることを見逃されてしまったケースが多いという。