Idaho Stateman
新生児は生まれてすぐ母親の声を聞き分けることができるという。胎児に聴覚が備わるのは比較的早く、母親の声を聴きながら成長するからだ。
米アイダホで約3カ月前に誕生したアナベル・ローレスちゃんは、生まれてすぐの聴力検査にパスしなかった。「羊水が耳に入ってしまっていて聞こえないことはよくあるんですよ」という医師の言葉に両親は安心し、家に連れて帰った。しかしその後、両親は犬のけたたましい鳴き声や、ドアのチャイムに娘がまったく反応しないことに気がついた。
母親のサラ・ジョー・ローレスさんはアナベルちゃんの目の前で、洗濯機のドアを続けて5回ほど思い切り閉めてみたが、びっくりするどころか注意を向けることもなかったという。耳の専門病院を受診したところ、アナベルちゃんには深刻な聴覚障害があることがわかった。この時、彼女は生後1カ月。この小さな赤ちゃんは、これまでまったく音のない世界に生きてきたのだ。「あの時は、絶望しました」と両親は振り返る。
ローレス夫妻は娘のために補聴器を作ることを決意。2カ月後の7月20日、補聴器のテストをするために親子は再び病院を訪れた。仕事で同行できなかった夫のために、サラ・ジョーさんは娘に補聴器を付ける瞬間を録画し始めた。
「聴こえる? こんにちは! ママの声が聴こえる?」
そう問いかけると、アナベルちゃんは目を見開き、笑顔を見せた。今までにない反応だった。手を叩くとそちらへ顔を向ける。
「カメラをかまえながら、大泣きしてしまいました。聴覚訓練士が手を叩く音を聴いたときのアナベルの反応は一生忘れません。きっと彼女本人もです。大人になったら、このビデオを見せてあげるつもりだから」
そう、TODAYに話すサラ・ジョーさんだが、なぜ取材を受けているのか──このビデオが予想に反してバイラル化したためだ。最初は夫に見せるためだけに動画共有サイトに投稿したはずが次第に注目を集め、世界中からアクセスが殺到。愛らしいアナベルちゃんに心奪われる人が続出している。
絶望が希望に変わった日、仕事から帰宅してこのビデオを見た父親は涙を流し、夜になるまでずっと娘とおしゃべりして過ごしたという。「彼が話している間に、アナベルは胸の上で寝てしまったの」とサラ・ジョーさんは地元紙「Idaho Statesman」の取材に幸せそうに語った。