―:ベルリン国際映画祭へようこそ。
キアヌ:ありがとう。僕も来られて嬉しいよ。
ー:昨日の上映を見られたそうですが、ブレイクからあなたについて面白い話を聞きました。上映を熱中して見られていたそうですね。自分の出演部分だけでなく、作品全体を見られて楽しまれていたと聞きましたが。
キアヌ:ええ、とても楽しく見たよ。彼女はすばらしかった。あんなに若いのに、円熟した演技をするね。作品は笑いあり、涙ありで、期待どおりの仕上がりだった。脚本を読んだり、レベッカやロビン・ライト・ペンと仕事をする過程で想像してた通りに出来上がっていたんだ。ロビンは、持てるスキルをすべて発揮できる役柄に出会ったんじゃないかな。コメディ俳優としてという意味だよ。演じる人物をよく理解して、なりきっていて、すばらしかった。
ー:ええ、本当にそのとおりだと思います。レベッカは、あなたのことをとても誉めていましたよ。あなたの出演作をたくさん見て、一緒に仕事をしてみて、あなたの演技に感心したと言っていました。役者にとっては最大の賛辞だと思うのですが。
キアヌ:本当にそう思ってくれてるといいな。ただ監督を満足させたかったんだ。
ー:それだけですか?
キアヌ:ええ、ただ満足させたかったんだ。クリスは複雑な役で、ストーリーの中で重要な役割を果たしている。彼は何でも話せる友人であり、誠実だが、実は心を固く閉ざしている。困ったヤツだけど、面白く…“魅力的”じゃなくて、何と言うか…
ー:“憎めない”?
キアヌ:そう、“憎めない”ヤツなんだ。どちらの面を演じているか分らなくなっても、レベッカがうまく導いてくれたよ。
ー:ええ、そうなんですね。
キアヌ:ロビンも「もっとできるでしょ?頑張って!」とお尻をたたいてくれた。
ー:こういう難しくて登場回数の多い役どころを演じると、初心に帰る気がしませんか。
キアヌ:ああ。今回、僕は脇役で、頻繁に登場、退場を繰り返すんだけど、そんなところも気に入ってるんだ。
ー:あなたのような大スターにいつもする質問なのですが、脇役というものは、作品全体において重要な意味を持ってますよね。絵画のように、一人ひとりが印象に残らなければならない。
キアヌ:確かに。
ー:出演時間が短い脇役は、演じるのがより難しいと思われますか?
キアヌ:そうだね。時間は関係ないと思いたいね。僕の登場シーンは印象的だよ。叫びながら、ドアを開くんだ。興奮状態で、胸には大きなキリストのタトゥーが入っている。演じてて楽しかったね。とにかく、あんな役を演じられたのは幸運だった。本当に光栄だったと思う。絵画の一部になろうと努力したよ。監督を満足させるためにね。監督がどんな筆使いをしようと、望みとおりのものを提供したかった。
ー:監督は特別な女性なのですね。
キアヌ:ああ、そう思わないか?
ー:ええ。あなたを夢中にさせた。
キアヌ:役者として夢中になって、仕事に行くのが楽しくなるんだ。恋をするみたいに…
ー:そうですね。
キアヌ:…監督にね。
ー:それで、やる気も高まりますよね。
キアヌ:ええ、そのとおり。
ー:逆のことはありますか?作品で…
キアヌ:夢中になれなかったこと?
ー:そうです。
キアヌ:監督も好きになれない?
ー:それでも朝起きて、現場に向かわなければならない。
キアヌ:幸運なことに、そんな経験はないよ。一度を除いてね。一度だけだから、ないに等しいよ。