俳優、小説家、そして漫画家として活躍している内田春菊が、自身が原作の『連結部分は電車が揺れる』映画版のメガホンをとった。意味深なタイトルのとおり、セックスレスのアラフォー専業主婦が主人公だ。
うちだ・しゅんぎく☆
59年8月7日生まれ、長崎県出身。84年、『シーラカンスぶれいん』(双葉社)で漫画家としてデビュー。おもな作品に『南くんの恋人』『私たちは繁殖している』『目を閉じて抱いて』などがある。93年には自伝的小説『ファザーファッカー』(文藝春秋)が直木賞候補になった。
映画「Love&Eros CINEMA COLLECTION」2ndシーズン
『連結部分は電車が揺れる 妻の顔にもどれない』
監督・脚本/内田春菊3月30日(土)~、池袋・シネマロサにてレイトショー公開
(C)「Love&Eros2」製作委員会
(オフィシャルサイト)http://www.love-eros.jp/
――本作は監督として2作品目になるそうですが、完成作をご覧になっての感想をお聞かせください。
「編集段階から何度も見ているから、もう自分でもわけが分からなくなっていて(笑)。逆に感想を聞きたいです。いかがでしたか?」
――夫とはセックスレスのアラフォー主婦が主人公ですが、そういった人たちが見たら、すごく共感できる部分が多い作品だと思いました。
「そう言っていただけるとうれしいです。セックスレスの夫婦って本当に多いみたいで、20年以上『レス』という夫婦もいるみたい。大変ですよね。私の場合、最初の結婚のときがセックスレスで、屈辱以外の何ものでもなかった。当時は20歳で、まだ漫画家にもなっていなかったんですけど。最低限のものを持って家を出て、離婚しました。それ以降、セックスレスという経験はないですね」
――原作は雑誌『FEEL YOUNG』に連載されたものですが、アラフォー女性を主人公したのには何か理由があるのでしょうか?
「担当編集者からリクエストがあったからです。となるとどうしても、世の中の雰囲気から『セックスレス』というものを取り上げざるをえなかった。妻として、母親として、まじめに生活しているのに、セックスレスでつらい思いをしている女性がいるかな、と。担当の編集者は男性なんですけどね」
――主人公の良子(りょうこ)のモデルになった女性は、具体的にいるのでしょうか?
「モデルはいろいろな女性の話を集めたものです。セックスレスに関しては男友達からもいくつか話を聞いたことがあるの。その場合は(自分が)『させてもらえない』という話もあって…。話してくれる人は素敵な美男美女なので、なんだかびっくりです。ちなみに、良子がダンナさんに言葉でいろいろ言われ、いじめられているのは、私の実体験です。3度目の結婚相手だった、前の夫の」
――良子の友人、美津子は内田さんご自身が演じられていますが、今回、キャスティングがたいへんだったとお聞きしました。
「本当にたいへんでした。何もかもがギリギリになった年末に、『漫画のファンだから』と演じて下さった小松さんに心から感謝してます。ただ、出る予定はなかったのに相手役を私がやることになってしまいましたが……」
――内田さんが体を張っているシーンがいくつかありましたよね。裸になって……
「体を張っているっていわれちゃった(笑)。私ね、けっこう今でも裸になる仕事が多いんです。『枯れ木も山の賑わい』で脱いでおこうかと。でも、美津子は子供がいない役なのに、私の場合、見る人が見たら完全に授乳経験がある乳首ってわかるので、役柄と超矛盾しているんですよね」
――この作品には、お子さんも女優として参加していらっしゃいますが、お母さんの裸のシーンを見て何かいっていましたか?
「第二子から第四子まで三人出てますが、まだ作品を全部見てないんじゃないかな? 『お母さんが脱いでるの大丈夫ですかって心配してる人がいたよ』って言ったら、一番芸歴の長い紅甘は『ふぅ~ん。まぁ、微妙だよねぇ』とは言ってましたけど」
――内田さんは、漫画家、作家、俳優……と、多ジャンルでご活躍されていますが、映画監督という仕事の醍醐味は、どういうところにありますか。
「これまで2作品を監督しましたが、一番違うのは、観た人の感想が『リア充』(笑)。漫画だと『あそこの線が……』みたいな、オタクな感想が多いんです。どっちも面白いですけどね。次回作の準備も始まっていて、女性専用のアダルト配信のシリーズ。いま話題の『エロメン』を撮る予定です」
――作品もさることながら、内田さんのプライベートも気になるところです。現在、17歳年下の彼氏がいらっしゃるんですよね!?
「それはどこからの情報?(笑)。でも、はい、そうですね。でも、いっしょには暮らしてませんよ。結婚の予定? ないんじゃないですかね~。いま連ドラの撮影に入っていて忙しいらしく、何日もメールがない。本当につきあってるのかな(笑)」
――読者としては、若い男性をつかまえられるコツみたいなものを知りたいと思うので、何かアドバイスをいただけたらうれしいのですが。
「役割を限定しないほうがうまくいくと思う。それは男女関係にも、親子関係にも当てはまると思います。今の彼氏は映像業界が長いから、そういう話をしているときはお兄さんぽいし、逆に80年代の音楽の話をすると『僕そのとき3歳ですよ』とか言われる(笑)。子供との関係にしても、私が子供っぽいときもあるし、逆に子供たちを守らないといけないときは守れるようにと思ってます」
――漫画家として今後、作品に描いていく女性は変化していくのでしょうか? アラフォー、アラフィフ女性は、これからもホットな存在になっていくと思うので、そういった年代の女性を主人公にして描いていくとか。
「私は今年で54歳なんですけど、この年齢の面白さ、みたいなものはあります。老化もしているから用心しないと。足腰をしっかりさせないと転ぶかもしれない(笑)。閉経間際の話も面白いと思うけど、女性の“芯”の部分は変わらないと思いますね。女にだって、男と同じように、いつまでも子どもの部分を持ち続ける権利があると思うしね」
――今日はいろいろな話をありがとうございました。最後に作品のPRをお願いします。
「この映画にはいろいろな状況にいる女性に対してのヒントを入れたつもりです。セックスレスの解消法も描かれ、最後は気持ちが落ち着くような仕掛けを作ってありますので、楽しんで見ていただきたいです」