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撮影/中原希実子

ヒット作『デストロイ ヴィシャス』の新鋭・島田角栄監督の放つ、“パンク”と“SM”の初めての融合! 既存の価値観を破壊するハミダシ者の世界を描き続けてきた島田角栄の新作がいよいよ公開される。

SMクラブの周辺で起こる怪奇な出来事の数々。不思議な力を持つSM嬢・美礼とその事件を捜査する刑事・武藤との限りなくセクシーなミステリー映画!

島田角栄監督に、主演を務めた黒川芽以さん、そして映画初出演となった澤田由希さんの3人に映画について語り合ってもらった。

映画『冴え冴えてなほ滑稽な月』

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監督/島田角栄

出演/黒川芽以、澤田由希、大塚明夫、鳥肌実、河瀨直美、JILL(PERSONZ)、古市コータロー(the collectors)、HIKAGE(THE STAR CLUB)、COBRA、BALZAC、クレージーSKB、Atsushi(NEW ROTE’KA)、KEITH(ARB)、奧崎謙三、リカヤ スプナー、瀧川英次、白井光浩、真凛、流血ブリザード、ダイアモンド✡ユカイ、浜尾京介

9月7日(土)よりユーロスペースにてレイトショー

本編:約110分

オフィシャルサイトhttp://www.saezaete.com/
©2013 T.O Entertainment, Inc.

 

(ストーリー)

飛び降り自殺事件を捜査していた刑事・武藤(浜尾京介)は、SMクラブの女王・美礼(黒川芽以)と出会う。その後、Mの性癖を持つ男たちが相次いで自殺する事件が発生。捜査に乗り出した武藤は、マリリンというSM女王の存在にたどり着くが……。

――島田監督にお聞きします。今回、映画の主演に、黒川芽以さんを選ばれた理由をお聞かせください。

image監督「特に自分のほうから主演のリクエストはしてなくて、配給さんのほうから『主演を黒川芽以さんで』と言われて、『ほんまですか!』ってなって。じつは僕、黒川芽以ちゃんのファンで、出てくれるとは思っていなかった」

黒川「最初、監督にお会いしたときは、出演が100%決まっていたわけではありませんでした。自分にとってチャレンジな役だったこともあって詳しく話しを聞いてから自分で判断したいと思っていたので。でも、お会いしてみたら監督の熱意がすごくて。監督が気さくに、でも、熱く語ってくださって、それで出演を決めました」

――これまで多くの作品に出演してこられた黒川さんにとって、SMの女王様役というのは、すごい挑戦で冒険だと思ったのですが。

黒川「今回の美礼という役を、面白いと思ってくれる人もいれば、そう思わない人もいると思います。自分としては、年に数回は、こういった面白いことをやってもいいんじゃないかと思っています。先ほど、完成作を観まして、面白くてずっと笑っていました。SMとなると、難しく考えがちになりますけど、この作品は、セクシーでロックでおしゃれで。映像もフレンチポップっぽいと思いました」

監督「フレンチポップ(笑)」

黒川「フレンチロックのほうがいいのかな。そういう感覚に陥るような、夢の国の話というか」

――澤田さんはいかがでした? 映画初出演でSM嬢という役、そして、ドラッグにハマったり。ハードルの高い役でしたよね。

澤田「演技すること自体が初めてだったので、初心者で何もわからないと自分で認めて、演じました。少し飛んでいる役柄でしたが、監督からも、『任せてくれればいいから』って言ってもらえましたし、黒川さんも、すごく丁寧に説明やアドバイスをくださったので」

黒川「特に最後のシーンは、かなり重要だったので、入念に話し合いましたね」

澤田「いろいろと気軽に話し合える現場で、すごく安心感もあったので、楽しく撮影させていただきました」

――絡みづらいロックミュージシャンとの共演は大変だったのでは?

澤田「見た目はパンクで怖そうな方が多かったので、かなり現場で挙動不審になっていました。じっさいお話するとすごくいい方ばかりでした」

監督「僕は映像でロックをしているつもりなので、本当にロックなカットが多かったと思います。ロッカーをキャストによく使うのは、演技を上回る生き様が出るから。でも、黒川さんは、飛び抜けてうまかったですね。これまでチンピラ映画ばかり撮っていたんで、今回のように、女性が主人公の映画は撮ったことがなくて。黒川さんから逆にアドバイスをいただいたりしましたし。最後のシーンは黒川さんもスタッフも全員泣いていて、いい現場だなと思いました。監督冥利に尽きるなと」

――これまでの監督作品と比較して、かなりストーリー性が強く出ていた気がするんですけど、何か心境の変化があったんでしょうか?

監督「自分が黒川さんのファンだから、ちゃんとしないといけないと思って(笑)」

――ロマンチックな物語だとは思っていましたけど、黒川さんのファンだったんですね。

監督「そうなんです。我が映画人生で、黒川さんに出てもらえるとは。光栄でした」

――SMをテーマにしますが、演じるにあたって何か作品を参考にされたんでしょうか。

image黒川「DVDをいただいてそれを観たり、あとはじっさいに女王様をされている方の話を聞いたりとか。でも、本当にあのボンテージを着るのは大変でした。伸びないですし」

澤田「3~4人がかりで着ましたよね」

黒川「いろんな負傷もあって」

――けっこう本格的でしたよね。SMにこだわりがあったとか?

監督「そういうSMの経験が一度もないので、一回ぐらいはSMクラブへ行って実践してみないと! とは思っていたけど、結局、時間がなくて行けずで。でも、SMの愛好家が見てもシンパシーを感じてもらえるようにしたかったので、周りのそういう関係者に、いろいろ話を聞いて、知識を取り入れていきました」

黒川「ボンテージを着ると気合いが入るんですよね。私自身はそんなにSじゃないので」

監督「ほんまですか? めちゃくちゃSに見えたんですけど(笑)」

黒川「仕事の時はSかもしれないですけど、プライベートは基本、Sではないので。自分の身体にSを染み込ませて役作りしました」

監督「2人のボンテージを見ると現場がけっこう照れちゃてね。エロくて(笑)」

――後半、女性同士のキースシーンもありましたが。

澤田「絶対、本番でやると照れると思ったので、前から練習しました」

黒川「私も、女性とキスをしたことが仕事でもプライベートでもなかったので、あのシーンがファーストキスなんですよ。だから初々しさが出ないように『ちょっとやってみようか』って2人で練習しました」

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――完成作を観ての感想をお聞かせください。

黒川「音楽の入り方が今まで経験したことがない感じで、『このシーンでこの音楽を使うか!』みたいな驚きがありました。でもそれが、めちゃくちゃかっこよくて、逆にそういうものに助けられた気がします。魚眼レンズを使ったり、色のトーンも変化していて、完成作を見て、ほっとしました。じつは見るまでドキドキしていましたから。じっさい見たら、セクシーでファンキーでミステリーで」

監督「これは、黒川さんのファンが見ても、ファンが減るような作品ではないと思います。黒川さんのファンも支持してくれるかなと」

黒川「かっこいいとか、面白いとか思ってくれるんじゃないかな。だからフレンチポップっぽいなと」

澤田「SMというハードなテーマではあるけれど、音楽や演出によって、想像していた以上にポップになっていて、とても見やすい。題材に対して見やすい映像だなと思います」

――一番印象に残っているシーンは?

黒川「どこだろうな。……やっぱり、SMルームでのシーンが人生で初だったので、そこですかね。3日間ぐらいであのルームのシーンを全部撮ったので、印象に残りました。あとはラストのシーンですね」

image澤田「私も苦労したなと思ったのがラストシーン。撮影の最初のほうでそのシーンを撮ったので、不安に感じていた部分があって。黒川さんや監督とすごく話し合ったシーンでもあるので、思い入れがすごくあります」

――本作の出演で、今後の女優人生になんらかの影響が出ると思いますか?

黒川「それは公開後にならないとわからない部分ではありますが、私は、一度作品を受けたら最大にいい作品にしたいと思っているので、その気持ちは、題材が何であっても変わらないと思います」

澤田「私は、これまで広告の仕事をやってきて、それまでは、清楚で上品な女の子を求められるのがほとんどでした。でも、この作品に出たことによって、自分の幅がいっきに広がったとような気がします。これからも毒っけのある役をどんどん表現できるようになりたいと思っています。演技をもっと勉強したいと思ったきっかけの映画です」

――監督、この2人の女優の話を聞いてみての感想はいかがですか。

監督「映画をずっと撮ってきましたけど、映画は撮影時間もかかるし、いざ公開となったらボロクソ言われることもあるんです。それをどこで帳尻を合わせているかというと、いとおしいスタッフ、キャストと同じ時間を共有できたことを大切にしたいと僕は思っていて。今、2人の話を聞いて、ちゃんと誠実にやれば、誠実なアクターがやはり集まってきてくれるんだなと思いました。結果を求めるのは当たり前なんですけど、2人を選んでよかったなと。僕は、人間としてつながってモノをつくっていきたいと思っているので、今、話を聞いて、一緒に仕事をしてよかったなと思いました」

――では最後に作品のメッセージをお願いします。

監督「親の金ではなく、自分で働いた金で見てほしいなと(笑)。その分ばっちり返すのでよろしくお願いします」

黒川「いろんなものが融合していて、夢の世界へ連れて行ってくれる映画だと思うのでぜひ観ていただきたいです。何度も言っているんですけど、フレンチポップみたいな作品です」

澤田「内容も映像も音楽もいいので、楽しんでほしいです。黒川さんのファンの方も、アートが好きな方も見てほしいなと思います。自分の演技のところは、生暖かい目で見ていただければなと思います(笑)」

監督「フレンチポップに生暖かいって、いったいどういう映画や(笑)」

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